百人組手の一人相撲 vol.2 「きっかけ」

  MATSURI関連企画「百人組手」のチャレンジを続ける中で感じたことを綴る「百人組手の一人相撲」。連載の第2回目は、百人組手のきっかけについて

 

百人組手の記念すべき第一弾「千社札」。折り鶴と同じく越前和紙で作られている。 

 

 今回の「百人組手の一人相撲」では、そもそも100個のアイテムを作るというアイディアはどこから来たのか、そしてそれらをどのようにかたちにしようとしているのか話をしようと思います。とはいえ気の張った所信表明などではなく、今の段階での「とりあえず」の考えです。百人組手は過程を見せるプロジェクトですから、それも許されるでしょう。

 

 さて、この百人組手のきっかけは既に2年前となったちとせグループの10周年記念に遡ります(ちとせグループ10周年記念特設サイト)。このイベントにおいて、ちとせのロゴである「折り鶴」を記念品として制作することになりました。もちろん、この特別な節目にただ折り鶴を折るだけでは魂がこもらないというものです。私たちはちとせのストーリーを表現し、これからの1000年に向けての誓いを込めて、「越前和紙」とのコラボレーションを企画しました。越前和紙には一説には1500年もの歴史があると言い伝えられており、その歴史と品質はまさに「千年先まで豊かに暮らすためのテクノロジー」です。その歴史へのリスペクトを込め、ちとせの思い描くバイオエコノミー産業の礎となる「藻類」を漉き込んで染めた特製和紙を作製し、鶴を折り上げました。

 

10周年記念で制作された折り鶴。(出典:ちとせグループ10周年記念特設サイト

 

 特製折り鶴の制作を通じて、このプロジェクトには記念以上の意味があったと感じるようになりました。世界観やコンセプトを発信する上でモノを作ることの重要性が、この折り鶴制作をきっかけにちとせの中で次第に強く認識されるようになったのです。モノの制作を通じた豊かなコミュニケーションの可能性が開かれたことにより、私たちは、ちとせそしてMATSURIの世界観を作り上げる新しいアプローチを手にしたのです。せっかく新しいアプローチに気づいたのですから、それを試し、さらに理解を深めたくなるのが人情です。

 

 とはいえ、MATSURIは広大な可能性に開かれており、単発のアイディアではその射程を捉え切ることはできません。ですからここも「とりあえず」の気持ちで、単一のアイテムではなく、数多くのアイテムのコレクションにより、その世界の輪郭を朧げながらも描き出すことができないか、と考えました。最終的には10周年の「10」とちとせ(千年)の「1000」の間をとって「100」のアイテムコレクションを作るプロジェクトの構想から、「MATSURI 百人組手」をスタートさせることとなりました。

 

 さて、いざ何かを作るとして、何から始めるべきでしょうか。私たちは分析から入りました。いまMATSURIに足りていない要素は何か?そもそも藻類とは?これを文化に取り入れるとはどういうことか?この分析の過程は今後もう少しだけ掘り下げることになるかもしれません。とりあえず、ここでは「染める」というキーワードが浮かび上がってきたという結論を述べるに留めておきたいと思います。

 

それでは皆様良いお年を。

 


written by:Aoi Nakamura 

 

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