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意志や価値観を広げるということ「Decision Making to Expand #5」
前回と前々回は、物事を整理しすぎると意志や価値観が広がらない。整理することこそが正義だという社会にしてしまったことが、世の中に意志や価値観が広げられない社会になってしまった原因だと思うということが書きたかったのですが、何が言いたいのかわからない文章にしてしまいました。今回も引き続き、意志や価値観を広げるということについて書きます。 少し前に、ある漫画の原作のドラマ化で原作者と脚本家の間に価値観や考え方の齟齬があり、大変残念な結末になってしまったニュースがありました。私は、件(くだん)の漫画もドラマも見ていないのですが、でも、まず世の中に伝えたい「意志」や「価値観」があって、それを伝えるために心血を注いで描いた漫画だからこそドラマ化が検討されるほどのファンが居たのだろうという事実が、あまりにも軽視されているような報道が目立っていたと私は感じます。自分の子どものように、いや、自分自身のように大事にしている作品が、自分が伝えたい「意志」や「価値観」とは全く異なる仕上がりのドラマになって自分の名前で世間に広がっていくことが、人生の全てを投げ出したくなるほど辛い状況であるという気持ちを、私は嫌になるほど理解できます。 今の日本の世の中には、このゼロからイチを作った人間の「意志」や「価値観」を踏みにじられる時の辛い気持ちを理解できない人が本当に多いということを、さらに、そんな気持ちが理解できない人の方が出世し易い社会の構造になっていることを、私は経験上知っています。もちろん、マスコミや広告代理店、コンサルや商社のような、業界と業界の間に立つ仕事をしていたらゼロからイチを作った面倒くさめな性格の人間の「意志」や「価値観」なんかを、いちいち丁寧に大事にしていたら仕事にならないし、何よりイチを十・千と広げることなんかできないという状況になるのもとても良くわかります。 しかし、だからこそ誰か面倒くさい人が作った「意志」と、その「意志」に一定の同調者が存在するという事実を大事にしないと、漫画からドラマや映画とメディアを変えて万・億の人の心には届かないはずなのです。たとえそれが大衆に広げるプロの目から見て、メッセージが難し過ぎて大衆には広がらないと判断したとしても、それでも尚、その難しさ・分かりにくさを内包した作品でないと、十・千になることはできても、万・億と広げることはできないと思うのです。一定のファンが居るアイドルやタレントを主演にして、彼らのファンに伝わり易いように「意志」や「価値観」を改変して小さな商業上の利益を確保したいだけなら、難解な価値観の原作なんか使わなければ良いのです。 この「意志」や「価値観」の伝播を、価値観が異なる大勢の人の間で調整しながら繋ぐという複雑でストレスフルな役割を担っているからこそ、マスコミや広告代理店、コンサルや商社のような仕事は付加価値が高く給料も高いのだと私は思います。しかし、この数十年の日本社会は、価値観と価値観の間に立っている職業の人間が過剰に偉くなってしまい、この複雑でストレスフルな役割を担わずに、表面的な仕事を進めてなんとなく繋がっていれば正解という価値観になっているように感じます。難解なテーマを伴う「意志」や「価値観」だからこそ、ドラマ化や映画化の議論の俎上に乗るほどのファンが居るのだという当たり前の事実を、この数十年の日本の社会はあまりにも軽視して来たのではないでしょうか。 一方で、Netflixのシティーハンターのように主演の俳優はじめ作品制作に関わった全ての人が、数十年前の原作に込められた「意志」や「価値観」をリスペクトして現代の視聴者に届けようとしている作品は、たとえそのモチーフが数十年前の古く難解なものであっても、ちゃんと世界で大ヒットするのです。Netflixにはできることなのに、日本企業には「原作者の意志や価値観をリスペクトする」ことができなくなってしまったことが、世界中で日本だけ30年も経済成長しなかった根本的な大きな理由の一つであると私は感じています。 私が新規事業を生み出すときにいつも一番大事にしているのは、この「最初にやろうと言い出した人間の意志や価値観が、どこにあるのかを大事にしながら、更に多くの人の意志や価値観をどんどん載せていくような器を作ること」なのですが、この「意志」と「価値観」を伝播させることが大事だという仕事の仕方が日本ではどんどん失われてしまっているので、この概念を伝えるのがなかなか難しいです。 藤田がたまに地獄のような顔をして悩み込んでいるときは、ほぼ間違いなく、私が仕事をするうえで最も大事にしているこのポイントを、社内外の誰にどう説明しても理解してもらえず、自分の説明力不足に打ちひしがれて困っているときだということだけでも知ってもらえれば、とりあえず眉間の皺も少しは減るし、髪の毛の減り具合も遅くなります(笑)。 written by: Tomohiro FUJITA ◾️本連載の記事一覧 #1:「広がる意思決定」と「縮まる意思決定」#2:整理と混沌のバランス#3:バランスを均一にしてはいけません#4:積み上げたものぶっ壊して、遮るものはぶっ飛ばして #5:意志や価値観を広げるということ
![正直MATSURI日記3:藻のLCAの目的ってなんだろう?](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/10.png?v=1714013512&width=533)
正直MATSURI日記3:藻のLCAの目的ってなんだろう?
こんにちは。正直MATSURIの新人担当者のサリーです。サリーは生物のことは得意なのですが、環境負荷の評価や関連する活動についてはまだ素人です。 ~前回のあらすじ~ 学ぶとは、「マネをする」ところからということで、社内にある環境負荷に関する報告にあったGREETというソフトを触ってみることにしました。環境負荷の計算をするためのソフトは世界に様々ありますが、「燃料」用途の環境負荷計算ではGREETがよく使われている印象です。四苦八苦しつつ、関連するニュースを読みながらGREETソフトを眺めることができるようになりました。そんな中で温室効果ガスの排出量を計算する方法というのは複数あり、変化し続けているものであることを理解していきました。どんな方法を使ったかも併せて情報発信する温室効果ガスの情報について発信するのが正直MATSURIな姿勢だと考えたところです。 ~あらすじ終わり~ ということでMATSURIの藻の製品をGREETソフトで分析するぞ!GREETソフトで計算をするにはまず計算の前提となる情報を整理する必要があります。藻の製品のゆりかごから墓場までにどんなステップがあるのか、そのステップで使うエネルギーや原料等のインプット、そのステップで出てくる産物や廃棄物等のアウトプットを整理していきます。このような製品のゆりかごから墓場まで考えて環境負荷を計算することをライフサイクルアセスメント(LCA :Life Cycle Assessment)[1] といいます。LCAの実施手順はISO14040で国際規格化されています。 藻の製品のライフサイクルに対するサリーの初期の認識はこうです。 藻を育てる。藻は縦型のフラットパネル型の藻類生産設備(PBR)で太陽光をいっぱい浴びて、どんどん育つ!育つのが早すぎて光合成に使う水中の二酸化炭素が足りなくなって育ちが悪くなるのを防ぐために二酸化炭素をブクブク(エアレーション)する。 藻ツリーの幹となる藻類バイオマスを収穫する。 バイオマスからいろんな製品ができる!その時に電気や熱や他のいろんな原料も使って作る。 燃料として使われる場合はエネルギーを得る。その際に燃やすことで二酸化炭素が出るけど光合成によって還元した二酸化炭素由来の二酸化炭素なのでその分はカーボンニュートラル。 物として使う場合は、その製品をある程度の期間製品として使われた後、埋立したり焼却処分される。分解したり、焼却する時に二酸化炭素が出るけどその分はカーボンニュートラル。 食品として食べる場合は人間が口に入れるまでについて考える? さて、これをどうやってGREETで扱えばよいのでしょう? LCAの実施方法はISO14040で国際規格化されているのでそれに沿って考えましょう。LCAを行う際は「目的や調査範囲の設定」(ISO14040)を行います。MATSURIが藻類のLCAをする理由とはなんでしょうか? 理由は2つあります。 理由1「藻類製品の環境負荷をより低いものにするための活動をするために現状把握をし、改善効果の予想をしたい!」 理由2「藻類が環境に優しいということを定量的に示したい!」 1つずつ整理して考えてみましょう。 理由1「藻類製品の環境負荷をより低いものにするための活動をするために現状把握、改善効果の予想をしたい!」 藻を育てて収穫するのに水などの資源やポンプを動かすなどの電気エネルギーを使ったり、藻類バイオマスから製品を作るのに加工に様々な原料やエネルギーを使用します。原料調達から廃棄されるまでのどの工程がGHG排出が多いのか、エネルギー消費が多いのか、水の消費が多いのかを把握することができれば、改善すべき工程・方向性がわかります。例えば、育てるときのブクブク(エアレーション)を24時間から12時間に減らすことができるとするとどの程度のGHG削減効果が見込めるのかが数値化できます。どのような改善をするとどの程度の効果が見込めるのかが数値化できるので、やるべき改善の優先度を決めるのにとても役に立ちます。 理由2「藻類が環境に優しいということを定量的に示したい!」 MATSURIは今の石油基盤社会から藻類を基盤にする社会になることで持続可能な社会の実現をします。MATSURIが幅広い賛同を得るには、藻類が環境に優しいということを定量的に示す必要があると考えています。これを示すためにはいったいどのような計算をすればよいのでしょうか? 「藻類バイオマス1kgの生産に水〇〇kgと土地〇〇haとエネルギー〇〇MJを使い、バイオマスに〇〇kgの二酸化炭素が固定され、GHG排出量は〇〇kgでした。」ということが計算されたとします。その結果を見て「藻類は環境に優しい!」と思うでしょうか?シンプルに考えると、「別に今、藻類バイオマスが無くて困ってないし、土地とか水を使うなら環境に影響があるから藻類いらないよ」と思うのではないでしょうか?しかし、この考え方には罠があります。あらゆる既存品を代替する新しいものが真のポテンシャルを評価されることなしに「いらない」という考えに結び付けられてしまうのです。...
![積み上げたものぶっ壊して、遮るものはぶっ飛ばして「Decision Making to Expand #4」](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/240130Matsuri___1_d66b3cb5-221b-4590-8e61-a175066efbc1.jpg?v=1706661189&width=533)
積み上げたものぶっ壊して、遮るものはぶっ飛ばして「Decision Making to Expand #4」
※年度末だったことや担当の体調不良など色々なことが重なり、第四回のコラムの更新が遅くなってしまいました。 前回は、拡大するためには整理と混沌のバランスを意識するのが大事だという話を書きました。 「仕事を進めること=整理を進めること」が一般常識とされている中で、藤田がそこそこの頻度で混沌が進むような意見を言ったり、わざわざ混沌が増すような指示をしたりすることに、新たにちとせに加わったメンバーが困っているのを見ると大変申し訳無い気持ちになります。 だからといって整理と混沌のバランスの取り方こそが、組織の拡大のための鍵であると私が信じている以上、現在の日本の常識である何事も整理が進むほど良いのだという考え方に自分を合わせるわけにもいきません。藤田がこのタイミングで混沌させるようなことを言う理由を何度も何度も説明するのですが「まーた藤田さんがわけわからないことを言っている」「せっかく一生懸命やってるのに認めてくれない」と余計困惑させてしまうことが多いので、そんな状態が少しでも和らぐと良いなと思い、前回の記事を書きました。 こうしてどんなに私なりに言葉と時間を尽くして説明しても、整理と混沌のバランスが大事なのだから整理ばかりしていても事業が広がっていかないのだということをなかなか理解してもらうことができません。その理由は、現代日本の価値観と異なるから以外にもいくつかあるのですが、そのうちの一つに、そもそも何を拡大したいのかが擦り合っていないという理由があるような気がしています。 私が広げたいのは個人の「意志」や「価値観」です。なにも藤田の「意志」や「価値観」だけを広げたいのではなく、そこには釘宮や笠原や堀内や星野だけでなく、今井や野本のような裏方の仕事をしているメンバーの「意志」や「価値観」も加わりますし、さらにそこには今や四〇〇人近いちとせグループに所属する一人一人の「意志」や「価値観」が加わります。さらにさらに、ちとせと資本提携したり業務提携していただく企業に所属する一人一人の「意志」もそこに加えて、世界に広げて千年先まで残したいと思っているのです。 関わった人たちの「意志」や「価値観」が広がれば広がるほど、様々な立場でそこに関わった個人に対して経済的にも恩返しができると私は信じています。資本主義って本質的にはそういうことでしょ?と思うのです。私は会社のCEOを名乗っている責任とプライドとして、ちとせに出資や業務委託をするという決断をしたり、自分の人生を賭してちとせに入社するという決断をした一人一人に「経済的にも得をした」と思って頂く方法を常に考えています。私が個人の「意志」や「価値観」を広げたいと何度も言っている理由は経済的な観点で考えてもその方が良いからと思っているからなのです。 今の日本は極めて高度に整理された社会です。その中にあるちとせのような小さな会社でも、皆が一生懸命働くほどその結果としてどんどん整理が進みます。しかし、私が広げたいのは個人の「意志」や「価値観」なのだから、整理と混沌のバランスが、過剰に整理に傾くのは、「意志」や「価値観」が広がらなく状態になっている匂いがするぞ感じるのです。 せっかく積み上がった整理をぶっ壊すのは、いつも気が引けるし申し訳ない持ちになるのですが、それでも創業者兼CEOにしか壊せないバランスってあるよなと感じて、「また、藤田さんがわけわからんこと言ってるぞ。」ということを言うのです。 某ヒット曲の様に、♫積み上げたものぶっ壊してー♫遮るものはぶっ飛ばしてー♫と楽しげに勢いよくできれば良いのですが、生憎そういう楽しげな性格に人間ができていないので、毎回なんだか申し訳ないなぁと感じているんです。役割なのでやりますけどね。 written by: Tomohiro FUJITA ◾️本連載の記事一覧 #1:「広がる意思決定」と「縮まる意思決定」#2:整理と混沌のバランス#3:バランスを均一にしてはいけません#4:積み上げたものぶっ壊して、遮るものはぶっ飛ばして #5:意志や価値観を広げるということ
![正直MATSURI日記2:燃料として使う場合の温室効果ガスどうやって計算するんだ?](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/2024-05-17_161854.png?v=1716185617&width=533)
正直MATSURI日記2:燃料として使う場合の温室効果ガスどうやって計算するんだ?
こんにちは。正直MATSURI新人担当者のサリーです。サリーは生物のことは得意なのですが、環境負荷の評価や関連する活動についてはまだまだ素人です。~前回のあらすじ~学ぶとは、「マネをする」ところからということで、社内にある環境負荷に関する報告に記載があったGREETというソフトを触ってみることにしました。インストールするだけでも大苦戦でしたが、無事にインストールを完了し、ソフトを動かせるようになりました!~あらすじ終わり~GREET起動! このGREETというソフトですが、起動するとすでに様々な製品・原料の数値・フローが入っています。例えば、トウモロコシから作られたエタノールをジェット燃料にするトウモロコシエタノールSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)を見てみましょう。ソフトのProductsからSustainable Aviation Fuel(SAF)を選択し、さらにEthanol- To Jet: Satandalone from Cornを選びます。 なるほど。なんかカッコいい図が出てきました。でもよくわからない。( ノД`)シクシク…。わからないときはおとなしくマニュアル[1]を読みます。100ページを超えていますが、張り切って読みます💪。 GREETは、アメリカ政府のエネルギー省の研究機関であるアルゴンヌ研究所が作成・管理しているソフトウェアです[2]。エネルギー省の所管ということで、燃料やエネルギーを生産し、消費(燃焼)するまでに出る温室効果ガス(GHG:二酸化炭素だけでなく、メタン、代替フロンなども含むめる)や、酸性雨の原因となる物質、使用される水の量を計算できるようになっています。環境への影響を計算をするためのソフトは世界中に様々ありますが、燃料を対象とした場合はGREETが広く使われていて、逆に燃料以外ではあまりGREETは使われていない印象です。MATSURIプロジェクトでは燃料だけでなく生活用品や食品まで様々なものを作ります。つまり、サリーは他のソフトやデータベースの使い方や仕組みも勉強しないとってこと?これは大変だ…😅。 燃料のライフサイクルを考えてみます。まず、燃料として使える状態に生産するまでと、どんな乗り物の何の燃料として使うかの大きく2つに分けられます。これを専門用語でWTP(Well -to Pump:油田からポンプまで)とWTW(油田からホイールまで(つまり走行段階まで))と言います。WTWにさらに乗り物の製造に関連する排出量を足したものをC2G (Cradle -to -Grave ゆりかごから墓場まで)と言います。 これらは、GREETの「WTP Results」タブと「WTW and C2G Results」タブに対応しています。そして「WTP Results」タブで右下に出てくるカッコいい図がこういうフローで燃料をつくるよ、ということになります[3]。そして各工程で原料の量や電気の使用量が数値として入っています。原料・エネルギーを作る際に排出されるGHG量がデータセットとしてソフトに入っており(多くの原料・エネルギーに対応しているが、ないものもある)、それらの数値を使うことで計算ができるようになっています。そして左下にある「Emissions」で二酸化炭素排出量や酸性雨の原因となるSOxの量等が表示されます。なるほど、ちょっと分かった! フローをクリックすると表示されるウィンドウ。使う原料やエネルギーの値が入っている。 さて、2023年9月にこのGREETに関する話題がありました。アメリカのエタノール団体がトウモロコシエタノールSAFについて、最新のGREETモデルの数値を使うことをアメリカ政府に求めたのです[4]。まず、サリーはこの話を聞いて「???もともとGREETの数値使ってるんじゃないの~?いまGREETを使っていてGREETを使ってほしいってどういうこと~?」と混乱しました。 何に混乱しているか現状を整理します。アメリカのエタノール団体の要求は「トウモロコシベースのエタノール...
![百人組手の一人相撲 vol.4 「藻類産業に足りていないもの」](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/d4c317b0d63403bd999df3e05d058aff.jpg?v=1710400142&width=533)
百人組手の一人相撲 vol.4 「藻類産業に足りていないもの」
MATSURI関連企画「百人組手」のチャレンジを続ける中で感じたことを綴る「百人組手の一人相撲」。連載の第4回目は、藻類産業に足りていないもの。 前回は「地図を眺めること」についてお話ししました。今回は私が藻類の産業利用における課題について書きたいと思います。もちろん、課題は至る所に山積しているのですが(だからこそ、MATSURIという活動の意義があります)、その中でも藻類の文化的アプローチにとって最も根本的な問題、すなわち「藻類とは何者なのか」というポイントについてです。 そもそも「藻類」という言葉の生物学的意味もそれほど明確ではありません。それは光合成する生き物のうち、いわゆる陸上植物(コケ、シダ、裸子植物、被子植物など)を除いた生物たちの総称です。つまり、系統的なことを言えば必ずしも近縁な生物のまとまりではなく、極めて多様な特性を持った種からなる、かなり強引な単語です。私たちがイメージするような緑藻(アオサなど)や紅藻(ノリなど)、褐藻(ワカメやコンブ)の仲間は食卓にのぼる種も多く、比較的イメージしやすいかと思います。ただし、多くの場合比較的大型の藻類をイメージされる方が多く、MATSURIがメインとして取り組んでいるような小さな藻類(微細藻類)は理科の教科書でわずかに触れる程度の接点しか持って来なかった方も多いのではないかと思います。 微細藻類の世界は、私たちの肉眼で捉えられないもう一つの植物の世界です。そして目で見える世界は、その表層にすぎないのだと感じることでしょう(実際のところ陸上植物とは乾燥を克服し地球の薄皮にへばりつく生き方を選んだ生命です)。微小の世界に蠢いている藻類には、もちろん緑藻や紅藻の仲間もいます。生物学に少し関心のある方なら珪藻を知っているかもしれません。そのほかにはアルベオラータやリザリア、エクスカバータといった呪文めいたグループ名が並びます。ちなみにエクスカバータにはミドリムシがいますし、緑藻や紅藻は(実は地上植物も)アーケプラスチダのサブグループです。ですが、人間にとってイメージしやすいような種類がそれぞれのグループの代表という訳でもありません。微細藻類は生態系のダークマター(暗黒物質)のような存在だと感じます。 私の感じる課題とは、つまりダークマターに関していかにコミュニケーションできるのか、ということです。私たちの社会は、いまだ微細藻類というグループに対して「有望な産業の道具」以上のイメージを持てていません。もちろん、そうした側面があること自体は問題にならないどころか、インセンティブとしてとても重要です。しかし、身近な動植物に対して私たちの社会が様々な考えを抱きうるように、人間の文化(culture)に根付いた成熟した関係を涵養(Cultivate)し、複雑な思考を巡らせられるようにならねば、微細藻類との関係は一面的で薄っぺらなものになってしまうでしょう。 食卓に並ぶ穀物や野菜、牛や鶏や羊やペットの犬も、はじめからその姿で人間の生活に組み入れられていた訳ではありません。それは多くの努力と長い時間をかけて織り成されてきたテキスタイルなのです。そして私たちはわずかな時間の中でテキスタイル作りを成し遂げようと努力しています。この驚くほど小さく、多様で、謎に満ちた存在について、合理的で豊かな関係を取り結べるようにすることこそ、「藻類産業構築」の終わりなきオープンゴールなのではと思います。 written by:Aoi Nakamura
![バランスを均一にしてはいけません「Decision Making to Expand #3」](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/240130Matsuri___1.jpg?v=1718000216&width=533)
バランスを均一にしてはいけません「Decision Making to Expand #3」
先週6日間ほどインドに行ってきました。整理と混沌のバランスをいつも意識していると第二回で書いた藤田にとって、インドという国は想像以上にとても興味深い国でした。一般的に日本人がイメージしているほど過剰に混沌側に偏った国ではないし、むしろ日本人よりも整理と混沌のバランスとそのあり方についてとても深く考え続けているのがインド人なのだというのが、たった6日間の滞在ですがよくわかりました。 インド人とは対照的に、現在の日本人は混沌を少しでも減らしてとことんまで整理し続けることがあるべき正解だと思っている人が多い気がします。そういう価値観の方に整理と混沌のバランスが大事なのでは?と意見すると必ず「世間知らず。」「MBAに行け。」などと頭ごなしに怒られて否定されます。いくつになっても、整理だけが正義だよ教の人に「バランスが大事なのでは?」と言っても怒られるだけなのがわかっているのに、それでも言っちゃう性格なのは直せません(笑) 整理と混沌のバランスが大事と言っても、何も私は組織の全ての部分のバランスを均一にするのが正しいとは思ってはいません。20年近く前に私がコンサルタントの仕事をしていた頃に発電所の目標設定や人事評価指標を作る仕事をしたことがあるのですが、発電所に混沌を持ち込んではいけません。発電所のような業務の場合、個人の意志や個人の判断は極力排除して、仕事の全てが綺麗に整えられたマニュアル通りに遂行することを良しとする組織で当たらないと危険だからです。(とはいえ、そういう価値観で作られた組織が、マニュアルを作ったときに全く想定していなかった事象に対峙しないといけないようなことが起こると・・・) 発電所は世の中でも極端な例にはなりますが、やり方がある程度確立している業務を行う組織においては、可能な限り業務をマニュアル化し、誰がやっても同じ品質を提供できる組織構造を作ること、つまり「整理すること」がビジネスを「広げる」ことに繋がります。マクドナルドやスターバックスが世界を制したのも、その業務を世界の多くの人でも対応できるようなマニュアルに整理するのが極めて上手だったことが大きな理由であることは言うまでもありません。また、マニュアル化して整理することにより従業員や顧客の安全が確保される確率も跳ね上がります。お金を稼ぐ大前提として、顧客の従業員の安全を守ることが会社経営にとっては何よりも大事であり、そのためにも業務を整理をすることは何よりも大事ということになります。(もっとも、整理が進んだ組織には全く想定外のことが起きた時の対処が遅れがちになってしまうという側面もあります。) 語り尽くされた議論ですが、今の日本で成功している企業には、欧米で作られてある程度やり方が確立している業務を日本人のセンスで整理し直して世界に広げた例は枚挙に暇がないくらい多いです。また、バブル期の過剰にアグレッシブな経営を収集するためになんとか事業を整理したことで高利益体質になり無事に今も日本経済の中心にいる企業もとても多いです。どちらの場合も、今それぞれの企業でトップに居る方の多くが「業務を上手に整理をしたこと」を評価されてそのポジションについていることになります。このことが、整理と混沌のバランスが他の国と比べて日本だけ大きく整理側に偏ってしまっている大きな理由の一つであるように私は感じます。 確認したいのですが、藤田は日本の大企業が過剰に整理側に寄っているから悪いということを言いたいのではありません。そもそも整理をすることが悪いことだとも思っていません。実際、ちとせという企業が大きくなるにつれて、我々が更に成長するためにも、顧客と従業員の安全を守るためにもより整理を進めなければならない業務・部署はどんどん増えています。 個人的な告白をすると、私自身は物事を整理するほうが楽だし、好きだったりします。しかし、スタートアップのCEOという役割をここまでの人生で選んでいることもあり、日々必死に自分の組織における混沌側の割合を増やそうと骨を折っているので、私自身が混沌を起こしたい人・混沌が好きな人だと思われている気がしていますが、決してそうではありません。そもそもシンガポールでの生活が好きって言ってる人間ですしね。 私はただ、他の国と比べて日本だけが、世の中の全てを整理側に寄せることだけが仕事の進歩であり社会の進捗であると多くの人が疑わない社会・カルチャーになってしまっているのはなぜなのか?という論点について議論したいだけなのです。その理由のうちの一つが、今の日本の経済界で実権を握る人のほとんどが「混沌の状況を上手に整理したこと」で評価された人だからというのは、多分ピントの外れた指摘ではないのではないかと思っています。 ちとせのような小さな会社を経営する上では、チームづくりという仕事の重要さが経営者が果たす仕事の割合で大きいと考えています。ちとせに「人事部」がまだ存在しないのもそれが理由です(そろそろ人事部ができることになるとは思いますが)。会社の中に無数にあるチームのそれぞれにとってあるべき整理と混沌のバランスは、それぞれのチームが対峙している業務の種類によって異なります。そして、それぞれのチームの整理と混沌のバランスは、チームにアサインする人間の嗜好と志向と思考によって調整するのが経営者の役割だと思うのです。 ちとせの中で最も混沌寄りのチームを作らなければいけない業務は、世の中でまだ誰もチャレンジしたことのない研究開発・事業開発を行うチームです。こういったミッションに対峙するチームを作る場合には、その分野について全くの素人を集めたチームでは上手く行かないのは言うまでもないのですが、だからと言ってその分野のエキスパートばかりを集めても上手くいきません。 この『チーム内の人材のバランスで整理の混沌のバランスを保つことこそが研究開発・事業開発の肝だ』という説明をすると、事業会社の方々には「なるほど面白いことを言うね。」とか「以前からそう思っていたのだけど言語化してもらってスッキリした。」というお言葉をいただくことが多いです。一方、コンサル業のような、外部から事業を支援するという生業に従事しており、尚且つその道で経済的に成功したキャリアの人は、「専門性は深ければ深いほど良い。」「専門家の割合が増えれば増えるほどよい。」と考えるために、藤田の「素人と専門家のバランスによって、整理と混沌のバランスをとるのが大事なんです。」という意見に対しては、お前は相変わらず「世間知らずだ。」とか「MBAに行け。」とお小言をいただくことが多いです。 その人が辿ってきたキャリアによってここまで綺麗に意見が分かれるのを見るたびに、好奇心旺盛な藤田はついつい楽しくなってしまって、ついついニヤニヤしながら真剣なお説教を聞いてしまうので、更に怒られます(笑) このあたりの「素人と専門家のバランス」が、新しい事業を興すときになぜ大事なのかという具体例がよく分かるので、先日公開されたアフリカを自転車で縦断したことがある片岡の記事(ちとせのひと Vol.6 片岡陽介 ~エボリューションの中で生きている~)を是非読んでみて下さい。 私自身は自転車で50kmも移動したことないのに、自転車でアフリカ縦断の片岡の話が面白くて何度も聞いているせいで、たまに面接で日本をバイクで縦断したとか、九州から東京まで自転車で旅をした話を熱心にしてくれる若人の話の反応が、ついつい薄い反応になってしまって申し訳なく感じています。 written by: Tomohiro FUJITA ◾️本連載の記事一覧 #1:「広がる意思決定」と「縮まる意思決定」#2:整理と混沌のバランス#3:バランスを均一にしてはいけません#4:積み上げたものぶっ壊して、遮るものはぶっ飛ばして #5:意志や価値観を広げるということ
![整理と混沌のバランス「Decision Making to Expand #2」](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/240130Matsuri___1_9ff7af0f-02ac-4295-ab82-bb79f124a8d3.jpg?v=1718001582&width=533)
整理と混沌のバランス「Decision Making to Expand #2」
「なんか社会の誰からも求められていない気がするけど、50歳にもなってしまったし久しぶりに連載でも始めるか。」という動機で、大海原に向かって小石を投げ続けてみようという気持ちで始めた連載ですが、第一回からボチボチ反響をいただきまして嬉しく思っています。 前回は、私が言いたい「広がる意思決定」とは、ポジティブやネガティブという軸とは全く関係がないのですということを言いたかったのですが、今世界にはびこるポジティブ信仰がなかなか根強いせいか、「私もポジティブ信仰にはしっくりこないと感じていた!」という点での反応が多かったような気がします。 第一回で私が言いたかったことは以下の図のようになります。 ポジティブと「広がる」が一致する第一象限は特に問題ないのですが、私が言いたいことを伝えるためには、ポジティブなのだけれど縮まる意思決定である第四象限について例を挙げて説明すれば良いのだということがわかりました。しかしながら、私がこの連載で対峙したいラスボスのうちの一人である「日本に蔓延るポジティブ信仰」は、どうやら現在のヒノキの棒とメラだけの装備では倒せそうもないことがわかったので、このラスボスを倒すのは連載の後回しにして他の論点の話をしたいと思います。 ポジティブと「広がる」の関係の説明を後回しにしてでも、まず先に触れなければいけないのは「整理や混沌」と「広がる」の関係です。 私が経営判断を迫られ、これは「広がる意思決定」なのかどうかを自問自答するときに、かなり重要視しているのが「整理と混沌のバランスを維持する」ことです。なぜなら、物事は整理しすぎても広がらず、混沌としすぎても広がらず、物事や組織が自発的に広がっていくには、最適な整理度合いというか、最適な混沌度合いがあると考えているからです。論理的な表現に言い換えれば、ポジティブやネガティブと「広がる」は独立事象でしたが、整理と混沌と「広がる」は独立事象ではないということになります。 ここで、私が「整理と混沌」のバランスを如何に大事にして意思決定しているかの例としてちとせのロゴマークの事例をご紹介します。デザイナーのIzuさんと何度もやり取りを重ねて最終的に出来上がったロゴマークは、文字間が広いものと狭いものの2通りでした。 デザインの完成度で言えば文字間が狭いものの方が正解だと思いつつも、私は文字間が広い方の案の採用を関係者で一人だけ強く主張しました。わざわざ不正解を選ぶ社長の意見は関係者全員からだいぶ反対されたのですが、ここは年に一回の社長のわがままカードを使わせてくれと強く主張したのを覚えています。 ちなみに、私はIzuの案よりももう少しだけ文字間を広げて欲しかったのですが、上記のような経緯だったので、デザインの完成度をさらに下げる方向の社長の願いは当社の広報部門に受け入れて貰えず今のデザインに落ち着いています。 では、なぜデザインとしての完成度を落としてでもロゴマークの文字間をもっと広げてほしかったのでしょうか。それは、「整理と混沌」のバランスが経営の意思決定をする上で大事だと思っている私の価値観を、ロゴマークからも表現したかったからです。 改めて言われれば誰でもそりゃそうだと言ってくれるのですが、古今東西、ありとあらゆるものが、混沌や隙間、つまり不完全さがないと広がらないわけです。完璧を目指すことは、完璧を実現したその瞬間から衰退が始まることを認めることになります。なんだか説教めいた難しいことを言っているようですが、カニだって食べられるリスクを背負って脱皮するし、我々の文化だっていつも人間的には不完全な人間ばかりが、新しい時代の文化の扉を開き続けて来ました。完璧を目指すことのつまらなさこそ、日本人が大事にし、世界に発信し続けるべき価値観の一つなのではないかと私は思っています。欧州や中華の価値観では最上とされてきた完璧な造形と幾何学模様の食器よりも、どこか曲がった造形で、ある意味運任せで描かれた模様の食器にこそ高い価値を置く日本人の価値観は、人類全体が大事にすべき宝だと私は思うのです。 だからといって、完全なる混沌の中では成長も発展の可能性も生まれません。「整理と混沌のバランスを取り続けること」こそが、組織やビジネス、文化や価値観が広がっていくためにとても重要なポイントだというのは、これくらい謎の熱量で説明すれば、何を言っているのかよくわからないけど、まぁなんか正しいことを言っていそうだし、めんどくさいから頷いておこうという気持ちで(笑)多くの人が同意してくれます。 こうして「整理しすぎてはいけない。」「完璧を目指したら広がらない。」という総論では(まーた藤田がめんどくさいことを言い始めたよとしぶしぶ)納得してくれるのですが、いざ個別に具体的な事例での意思決定の場面になると、藤田が物事を「混沌寄り」にバランスを動かそうとするたびに、「常識を知らない。」「センスがない。」「なんでわざわざ壊すんだ。」と文句を言われ、藤田が目指したいバランスに物事を調整することを許してもらえません。 この整理と混沌のバランスを調整することは、自分が最終決定者にならないとやらせてもらえないと30歳前後で感じたことがサラリーマンを辞めて自分で会社を作るしか無いと思った理由の一つです。その後20年近く経ち、株主だろうが社長だろうが、所詮社会の中の駒の一つでしかない以上は、私が「ここだ!」と思うバランスでの意思決定を続けさせてもらうことはなかなか難しいのだなぁとつくづく感じています。 written by: Tomohiro FUJITA ◾️本連載の記事一覧 #1:「広がる意思決定」と「縮まる意思決定」#2:整理と混沌のバランス#3:バランスを均一にしてはいけません#4:積み上げたものぶっ壊して、遮るものはぶっ飛ばして #5:意志や価値観を広げるということ
![「広がる意思決定」と「縮まる意思決定」「Decision Making to Expand #1」](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/240130Matsuri___1_4cf6b66a-43bb-4053-9ca0-5480e401577d.jpg?v=1718000878&width=533)
「広がる意思決定」と「縮まる意思決定」「Decision Making to Expand #1」
もう半年前の出来事なのですが、50歳になりました。半世紀です。ヤバいです。 この50年間、とくにちとせを始めてからの15年間、大変多くの方との縁と支援に恵まれて、日本だけでなく色々な国の方と仕事をするような人生になりました。欧米のビジネスマンだけでなく、東南アジアや中東の王族の皆様、一代で大財閥を築き上げたオーナーや二世三世のオーナー、選挙で選ばれた政治家や官僚のトップ、国立研究所や大学の研究者の皆様、また一方で、現場の労働者の人達や森の中に住む原住民の皆さん、途上国から出稼ぎで来ている皆さんのそれぞれと、長い時間を掛けて色々な話をさせてもらい色々な価値観と接することができました。 そもそも私の根源的な仕事の動機は、ただひたすら「新しい世界を知り好奇心を満たすこと」にあります。多様な価値観の皆さんの考え方・行動原理と接し新しい価値観と触れることそのものが、私にとっては仕事の動機なのです。そんな動機で仕事をしてきた結果、世界中で日本だけが、なぜ失われた30年と呼ばれる時代を過ごしてしまったのかの本質的な理由がなんとなく見えてきたような気がしています。 その理由とは、意思決定において「広がる意思決定」か「縮まる意思決定」かという視点・軸が、日本人(特にエリートの日本人)の考え方、物事の決定のプロセスに含まれていないからだという仮説を持っています。また、少なくともちとせにおいては、意思決定者である私が可能な限り「広がる意思決定」を選び続けてきたことが、なんとか15年間会社が倒産せずに少しづつ拡大してきた大きな理由の一つだと思うのです。 日本がこの30年徐々に縮んでいる間に、東南アジアの各国も、中東の各国も大発展を遂げています。欧米も日本のような経済的停滞は起こしていません。 私は経済発展だけが正義であるとは思いませんし、かなり強く母国を愛しているタイプの人間です。ですが、日本の外に出て暮らしがドンドン発展する中に身をおいていると、世界中で自分の母国だけがドンドン縮んでいくことを実感します。日本を愛しているからこそ、この状況を目の当たりにし続けるのは気持ちの良いものではありません。 日本だけが世界と異なる状況であることの肝は、「広がる意思決定」という概念にあるのだと私は感じています。今までこのことについて説明する機会がなかったのですが、今回連載記事を書くことになったのであの手この手で皆さんに「広がる意思決定」とはどういうことを言おうとしているのかを説明し続ける努力をしてみようと考えています。 一体、藤田は「広がる意思決定」という言葉で何を説明したいのかさっぱり伝わっていないと思いますが、「広がる意思決定」と似て非なる概念に「ポジティブな意思決定」があると思っています。私は、この「ポジティブ」と「広がる」は違うものだと言いたいのですが、この違いをどうもうまく説明できないままでいます。 なぜ、うまく説明できないかと言うと、とにかくポジティブで居続けることが良いことだという価値観が強く蔓延っているからだと思うのです。藤田がなにか小難しいことを言っている時点で、こいつもどうせ「ポジティブでいろ」と、近頃よく聞くお説教を始めたいのだと思われてしまうのです。違うのに。 このポジティブで居続けろという社会からの圧力は年々その強度が増しているような気がしています。おそらくこのポジティブ信仰は、元来は米国で強かったものであり、私が若い頃の日本は今ほどの圧力ではなかったように思うのです。今や日本では、公の場で少しでもネガティブな意見を言おうものなら人間性ごと否定され、社会から抹殺されるような非難を浴びるので、根っからやたらシニカルに人間できている藤田は、近年は何も思ったことも言えないような窮屈さを感じながら生きています。私のようにこの世界に蔓延る「ポジティブ教」になんとなく窮屈な思いをしている人は少なくないのではないでしょうか。 正直に告白しますが、私は社交性や爽やかさがだいぶ足りない人間です。許されるのであれば、週の半分は誰とも話さずに部屋の隅っこでじっと座っていたいと日々思って生きている人間です。 仕事で知り合う方に、自分のことをこのように「根っから根暗なんですよ。」と言っても、あまり信じてもらえないどころか、「そんなことはない。あの時の藤田さんだって。」という話になることが多いです。 この認識のギャップの理由を考えると、それは根っからシニカルな私自身は、ポジティブな人間で居続けることは諦めている一方で、何かの意思決定をする時にそれが「広がる選択」なのか「縮む選択」なのかについては強く意識し、無理をしてでも常に「広がる選択肢」の方を選ぶようにしていることが理由のような気がしています。可能な限り「広がる選択肢」を選ぼうとするので、なんとなく藤田は前向きなことを言うポジティブな人間だという印象を多くの方に持っていただけているのだと思います。しかし当人的には、それはポジティブなのではなくて、「広がる選択肢」を選んだだけという意識なのです。 初回は、結局藤田の言いたい「広がる意思決定」というのはポジティブであることとは違うらしいということしか書けませんでしたが、今後あの手この手で整理を続けてみたいと思っています。私がこんなゆるい連載を書くことで、日本が再び世界の中で大きな存在感を発揮できる国に戻ることに、ほんの少しでも貢献ができれば良いなと考えて、現時点で誰からも求められてないことを始めている気もしていますがとりあえず一年は書き続けてみたいと思います。 written by: Tomohiro FUJITA ◾️本連載の記事一覧 #1:「広がる意思決定」と「縮まる意思決定」#2:整理と混沌のバランス#3:バランスを均一にしてはいけません#4:積み上げたものぶっ壊して、遮るものはぶっ飛ばして #5:意志や価値観を広げるということ
![百人組手の一人相撲 vol.3 「最初の一歩」](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/2.jpg?v=1705821603&width=533)
百人組手の一人相撲 vol.3 「最初の一歩」
MATSURI関連企画「百人組手」のチャレンジを続ける中で感じたことを綴る「百人組手の一人相撲」。連載の第3回目は、最初の一歩について。 日々進化している百人組手の「地図」(2023年夏版) 今回の「百人組手の一人相撲」では、プロジェクトを始めるにあたって考えたことをお話ししてみたいと思います。前回、私たちは状況の分析から入ったと述べました。すなわち自分たちの現在地と、「とりあえず」の目標地点を定め、予期される障害物をある程度詳らかにするというプロセスです。それは冒険に出る人が地図を読むことにも似ているかもしれません。 今回のケースで言えば、その目的地は「藻類産業の興りを具体的なアイテムのコレクションとして表現し、産業界の関係者だけでなく広く様々な属性の人々にその世界観を伝える」ことが目的となります。しかし、ここですでに「広く様々な人々」とは誰か?という問いが生じます。一方で、これは問いの立て方が不十分、ということでは必ずしもないと私たちは捉えました。問題を構造化するということはそれ以外の要素を方法的に忘れ去る、ということです。問いを限定することは、同時に矮小化でもあります。私たちが目指すものは「なるべく多くの人に藻類産業のポテンシャルと具体性を問うこと」ですから、むやみに問題を小さくすべきではありません。ここに、二律背反が生じました。 地図をつくる様子 私たちの得た回答はこうでした。「広く様々」をそれ以上に限定せずに、かつ具体的なアプローチが可能な定式に落とし込むには、その世界観を表現する力と志向を持った人々に私たちの理念を託し、その表現する人々の関心に応じながら、藻類の世界を広めていけばよいのではないか。つまり、クリエイターとのコラボレーションにより藻類を用いたマテリアルやアイテムを制作し、それぞれの領域へと拡散していくことで最大限の多様性を担保できるのではないかと考えました。すると実質的な目的地は次のように姿を変えます:「クリエイターと共に藻類産業の興りを具体的なアイテムのコレクションとして表現し、それらのアイテムを受け止めてくれる人びとには誰にでも、その世界を覗く窓を拓く」。 もちろん、この変形にはそれなりの代償があります。例えば、プロジェクトの大前提として偶然性や思いがけなさへの対処を「やってみる」という即興性への覚悟が必要になります。多くのコラボレータと共に創り上げていくからには、先々の展開をちとせの予想通りにコントロールすることは難しいでしょう。そこでは舗装された道の快適さはもはや期待できません。しかし、同時にそれは非ヒト種を扱うときの通例、生物学の常道でもあります。彼らは人間の都合は必ずしも関係なく、直接の制御を受け付けません。彼らと仕事をするには、彼らのやり方に流れを沿わせ、うまく付き合っていく必要があります。そしてこれはちとせの基本方針をなす要素でもあります。私たちはこのやり方でまずは目的地に「向かってみる」ことにしました。 written by:Aoi Nakamura
![正直MATSURI日記1:まずはGREETってやつを使ってみようと思います。](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/2024-01-05_104020.png?v=1704418853&width=533)
正直MATSURI日記1:まずはGREETってやつを使ってみようと思います。
こんにちは。正直MATSURI新人担当者のサリーです。サリーは生物のことは得意なのですが、環境負荷の評価や関連する活動についてはまだまだ素人です。ですので、学ぶためにも、まず最初に社内にある環境負荷に関する報告を自分で手に取り、動かしてみようと思います。学ぶとは、「まねる」または「マネをする」ところから始まるものですよね! 2022年2月24日の「GREET MODELを用いたCO2排出量試算について」というMATSURI検討会[1]の資料を読みました。その中で、GREET[2]っていうソフトを使って藻類生産の温室効果ガス(GHG)の排出を評価していました。おそらくこのソフトを使えば「この作業でGHG排出が多く発生しているよ。」といったGHG排出の現状や「この作業の電力を50%削減するとこんなに効果が!」といったアクション対効果をソフトの数値設定を変更してみることで理解できるようになるのではないでしょうか?ですので、まずはこのソフトを実際に動かしてみることにします! ということで、まずはサリーのPCにインストールだ! な、なんということでしょう。マニュアルの手順通りにやっているはずなのにエラーが発生します。 思い返せば、私の人生はいつも失敗ばかりです。「とりあえずやってみよう!」といって手を付けてはうまくいかない。ソフト一つ動かせない私なんて… その後、ソフトの付属ファイルの保存先を試行錯誤するなどして無事にGREETソフトを動かすことができるようになりました。よし!ここから実際にソフトを動かしながら学んでいこう! 次回もお楽しみに! [1]MATSURI検討会とは2022年年度まで月1で行われていたMATSURIパートナー向けのクローズドな検討会です。2023年度からは分野ごとの事前検討会(分科会)に変更となりました。 [2]GREETはアメリカのエネルギー省のアルゴンヌ国立研究所(ANL)が取りまとめる燃料のGHG排出量の算定を行うためのモデルです。Greenhouse gases, Regulated Emissions, and Energy use in Transportation model で略してGREETモデル。以下のサイトからソフトをダウンロードできます。https://greet.anl.gov/index.php?content=greetdotnet written by:サリー
![百人組手の一人相撲 vol.2 「きっかけ」](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/1.jpg?v=1690955939&width=533)
百人組手の一人相撲 vol.2 「きっかけ」
MATSURI関連企画「百人組手」のチャレンジを続ける中で感じたことを綴る「百人組手の一人相撲」。連載の第2回目は、百人組手のきっかけについて。 百人組手の記念すべき第一弾「千社札」。折り鶴と同じく越前和紙で作られている。 今回の「百人組手の一人相撲」では、そもそも100個のアイテムを作るというアイディアはどこから来たのか、そしてそれらをどのようにかたちにしようとしているのか話をしようと思います。とはいえ気の張った所信表明などではなく、今の段階での「とりあえず」の考えです。百人組手は過程を見せるプロジェクトですから、それも許されるでしょう。 さて、この百人組手のきっかけは既に2年前となったちとせグループの10周年記念に遡ります(ちとせグループ10周年記念特設サイト)。このイベントにおいて、ちとせのロゴである「折り鶴」を記念品として制作することになりました。もちろん、この特別な節目にただ折り鶴を折るだけでは魂がこもらないというものです。私たちはちとせのストーリーを表現し、これからの1000年に向けての誓いを込めて、「越前和紙」とのコラボレーションを企画しました。越前和紙には一説には1500年もの歴史があると言い伝えられており、その歴史と品質はまさに「千年先まで豊かに暮らすためのテクノロジー」です。その歴史へのリスペクトを込め、ちとせの思い描くバイオエコノミー産業の礎となる「藻類」を漉き込んで染めた特製和紙を作製し、鶴を折り上げました。 10周年記念で制作された折り鶴。(出典:ちとせグループ10周年記念特設サイト) 特製折り鶴の制作を通じて、このプロジェクトには記念以上の意味があったと感じるようになりました。世界観やコンセプトを発信する上でモノを作ることの重要性が、この折り鶴制作をきっかけにちとせの中で次第に強く認識されるようになったのです。モノの制作を通じた豊かなコミュニケーションの可能性が開かれたことにより、私たちは、ちとせそしてMATSURIの世界観を作り上げる新しいアプローチを手にしたのです。せっかく新しいアプローチに気づいたのですから、それを試し、さらに理解を深めたくなるのが人情です。 とはいえ、MATSURIは広大な可能性に開かれており、単発のアイディアではその射程を捉え切ることはできません。ですからここも「とりあえず」の気持ちで、単一のアイテムではなく、数多くのアイテムのコレクションにより、その世界の輪郭を朧げながらも描き出すことができないか、と考えました。最終的には10周年の「10」とちとせ(千年)の「1000」の間をとって「100」のアイテムコレクションを作るプロジェクトの構想から、「MATSURI 百人組手」をスタートさせることとなりました。 さて、いざ何かを作るとして、何から始めるべきでしょうか。私たちは分析から入りました。いまMATSURIに足りていない要素は何か?そもそも藻類とは?これを文化に取り入れるとはどういうことか?この分析の過程は今後もう少しだけ掘り下げることになるかもしれません。とりあえず、ここでは「染める」というキーワードが浮かび上がってきたという結論を述べるに留めておきたいと思います。 それでは皆様良いお年を。 written by:Aoi Nakamura
![百人組手の一人相撲 vol.1](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/2023-08-02_10.35.21.png?v=1690940232&width=533)
百人組手の一人相撲 vol.1
MATSURI関連企画「百人組手」のチャレンジを続ける中で感じたことを綴る「百人組手の一人相撲」。連載の第1回目として、まずは担当者よりご挨拶。 「百人組手」。それは文字通り百度の挑戦を潜り抜ける荒行。ちとせはMATSURIプロジェクトの一環として、100種類のプロダクト(のプロトタイプ)を制作し、その過程をレポートする難題に挑戦しています。現在は、最初の取り掛かりとして「染めるーー藻類産業における工芸の可能性」をテーマに、主に視覚的な表現の観点からユニークなモノづくりをしている作家や熟練の技術を持つ技術者とコラボレーションを進めています。これから藻類という魅力的な生物とより多くの人が接点を見つけられるよう、テーマ探しも精力的に進めていますのでよろしくお願い申し上げます。 さて、今では少しずつ社内での認知も上がり、「こんなリクエストがきてますよ」とか、「ここと何かできないですかね?」と声をかけていただくことも増えてきたこのプロジェクトですが、最初のきっかけはいわば個人発案の持ち込み企画でした。周囲の応援があるとはいえプロジェクトの方向性が自分に委ねられており、始めはさしずめ「一人相撲」の様相でした。最近では、いろいろな人の力を集めていくうちに「百人組手」というプロジェクトそれ自体が一つの生き物のように自律的に立ち上がっていくのを感じており、時々「おっ」と呟かされます。 とはいえ、百人組手はまだ始まったばかり。会社という狭い埒を超えてオープンワールドをどんどん探索し、どんどん強い生き物に成長して欲しいです。思えば、プロジェクトの行きたがる方向が次第に見えてきて、「百人組手」に対するガッチリとした手応え、いわばぶつかり稽古感が芽生えてきたように感じます。 何かを思い描きながらその輪郭が描けない人、自分の先入観を超えて何かを作りたい人、その「一人相撲」、私たちと一緒にとりませんか?たかが一人相撲、されど一人相撲。どこまで行っても一人相撲かもしれませんが、集まってみれば一人相撲以上の意味が生まれ出てくるかもしれません。しかしそれは、みんなで集まって「つながる」「力を合わせる」ことを呼びかけることとも少し違うのだろうと思います。それぞれが一人相撲をやりおおせるために、つかの間だけ、近くにいると感じることが何か意味を持つのではないかと思います。 written by: Aoi Nakamura
![マレーシア サラワク州において、CHITOSE Carbon Capture Central(C4)の開所披露会を執り行いました](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/WhatsApp_Image_2023-05-11_at_11.14.02_5bd639c5-7981-4ac5-b8c1-60a02cb5cdd8.jpg?v=1688948494&width=533)
マレーシア サラワク州において、CHITOSE Carbon Capture Central(C4)の開所披露会を執り行いました
2023年5月10日、マレーシア サラワク州において、CHITOSE Carbon Capture Central(C4)の開所披露会をちとせグループ、Sarawak Biodiversity Centre、Sarawak Energy Berhad社と共同で執り行いました。 開所披露会には、在マレーシア日本国大使館 狩俣公使や経済産業省の皆様をはじめ、MATSURIにご参画いただいているパートナー企業様、金融機関様にお越しいただきました。マレーシアからもサラワク州のトップであるアバン・ジョハリ首相ほか、政府関係者等の来賓にお越しいただき、あわせて約250名の盛況な会となりました。 世界最大規模の藻類生産設備であるC4の開所は現地でも高い関心と注目を集め、テレビ番組でも報じられるほか、新聞各社の一面を飾りました。C4で生産された藻類がSAF(持続可能な航空燃料)等への応用に期待される点や、熱帯気候下における次なる藻類工業規模生産に向け、C4がマイルストーンになったとの見解も報じられています。※関連記事一覧はこちらから。 今後ちとせグループは藻類産業構築のためさらに活動を加速させ、サラワク州から世界を変えていきます。生き物たちの力と共に千年先の未来をもっと豊かにするという大きな目標に向かって挑戦し続けてまいります。 中央:ちとせグループ代表 藤田 右:アバン・ジョハリ首相
![世界最大規模の藻類生産設備が開所式開催](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/DSC01439.png?v=1680741706&width=533)
世界最大規模の藻類生産設備が開所式開催
2023年4月4日(火曜日)9時現地時間MRT/マレーシア:クチン 世界最大規模の「藻」生産設備5ヘクタールの開所式が催されました。 式には在マレーシアの日本大使をはじめNEDO理事、経済産業省の方々やMATSURIプロジェクトに参画している多くの企業の代表や役員の方々にご列席いただき開催する事ができました。ここから藻類の産業構築が本格始動しています。※本プロジェクトはNEDOから委託され藻から燃料にするための研究開発をしております。 晴天の中で迎えた開所式は、多くのメディアも参加し日本からはNHKも取材に来られ当日のNHKワールドやNHK WEB、おはよう日本などでも放映されております。開所宣言を発したCHITOSEグループ代表の藤田は、これまでの熱い想いや、ここから加速する藻類産業への想いを語られ参列者を感動させるスピーチとなり、きっと誰もが忘れられない日となったと思います。 ※完成に先立ち、ここから加速する藻類産業への熱い想いをスピーチをするCHITOSEグループ藤田代表 委託先であるNEDOからもリリースと情報発信がされました! https://twitter.com/nedo_info/status/1648589497527939074https://www.nedo.go.jp/ugoki/ZZ_101191.html?from=TW
![【記念】世界最大規模の「藻」生産設備稼働開始に伴う植樹が行われました](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/DSC01317.jpg?v=1680743654&width=533)
![未来の生活を支える”藻類”プラスチック](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/2023-04-10_180112.png?v=1681117520&width=533)
未来の生活を支える”藻類”プラスチック
「1人 1日 約200g」 この数字は、日本人1人が1日に捨てるプラスチックの量である。プラスチックは石油を精製したエチレンやプロピレンなどからできているが、石油はこのまま使い続けると後50年ほどで枯渇するだろうと言われている。そのため、石油を原料としない「バイオプラスチック」が世界中で注目されている。 未来の私たちの生活を支えるバイオプラスチック バイオプラスチックの原料となるのは、トウモロコシ等の穀物資源、サトウキビ等から取り出される糖類が主体である。バイオプラスチックの一種であるポリ乳酸(PLA)は、デンプンの発酵によってできた乳酸が化学反応することで精製される。一方で、トウモロコシやサトウキビを原料とすることは、有限な農場において人々への食糧の供給を減らすことにも繋がるため、農作物以外の原料を探索する研究も進んでいる。例えば、微生物による発酵やセルロース(食物繊維)を用いたバイオプラスチックの生産が試みられているが、中には、藻類を原料とした生産に着手した企業もある。米企業ALGIXは、藻類からプラスチック素材を製造することに成功し、同社の製品は包装材、園芸用資材、電子機器等に活用されている。 藻類を用いたバイオプラスチックへの注目 このようにバイオプラスチックに注目が集まる中、藻類を原料としたユニークなプラスチック製品を発見したので紹介したい。「Ooho」と名付けられたその製品は、ロンドンの学生達がペットボトルの廃棄量削減を目指して発明した、”食べられる”ボトルだ。この製品は、植物や海藻(褐藻)から抽出した天然素材で作られていて、4~6週間で分解される。そのため、従来のペットボトルと異なり、このまま土や海に捨てたとしても自然に分解される。また、ジェル状の膜で水を覆ってあるため、清潔な水を持ち運ぶことができ、且つOohoを割って中の水を飲むこと、そのままOohoを食べることも可能である。さらに環境に優しいことに、同じ量のプラスチックを作るのに対し、Oohoの製造に必要な二酸化炭素量は5分の1であり、エネルギーも9分の1で済む。是非とも下の動画でこのユニークな製品をご覧いただきたい。 Oohoを製造しているSkipping Rocks Labのホームページによると、現時点では残念ながらイベント等での小規模な販売のみで、一般流通はしていないようだ。今後、量産化が進み、日本でも気軽に手に入る日が来ることを待ち遠しく思う。
![バイオ燃料で注目が集まる、「藻」という生き物の魅力とは?](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/2023-04-20_132430.png?v=1681964700&width=533)
バイオ燃料で注目が集まる、「藻」という生き物の魅力とは?
約30億年前に「光合成」という反応を世に生み出し、大気を生み、多くの生物を絶滅させ、そしてまた生み出してきた藻。技術の進歩がめまぐるしい現代においても、結局ヒトは、藻が作り上げてきた地球の生態系の中の一コマに過ぎず、その事実はこれからも変わることはありません。 生活が豊かになり、様々な価値観が生まれたことで何が正解かが見えにくい時代になっていますが、そんな現代だからこそ、この「藻」という原点となる生物と向き合うことに価値があるのではないかと思います。 このページでは藻という生き物の魅力を、歴史を紐解きながらお伝えしたいと思います。直近で話題になっているバイオ燃料(SAF/燃料)の基点となっている藻類とは・・・。 藻類とは何か? 「藻」はどんな生き物かご存知でしょうか? 身近なところで言えば、池や水田でよく見かける緑色の水を思い浮かべてください。あの緑の水の中には、肉眼では見えない多種多様な小さな緑色の生物が存在しています。水中にいる、体長1ミリにも満たない主に緑の生物、これを本サイトでは『藻類(※)』と呼んでいます。 商業利用されている代表的な藻類©2017 ちとせ研究所 ※生物学的に厳密に言えば、『藻類』のカテゴリーにはワカメや昆布などの海藻や、光合成もしない原生動物も入ってくるのですが、それらを指す際は別の言葉で言い分けて記載しています。本コラムでの『藻類』という単語は、特に断りがない限り『微細藻類』のことを指しています。 藻類と人類の関わり 藻類は、植物と同様に光合成をするため「小さな植物」と呼ばれることもありますが、実は進化の過程においては藻類こそが植物の祖先にあたります。 食料も化石燃料も、元を辿れば藻類から 藻類の起源は約35億年前までにさかのぼります。地球が誕生したのが46億年前で、現在の人類(ホモ・サピエンス)が誕生したのが20万年前と言われていますから、藻類の起源がいかに古いものかお分かりいただけるかと思います。 藻類は水中での進化を重ね、約5億年前に上陸。コケ植物、シダ植物を経て、今の我々の身の回りにある植物へと進化しました。この藻類から植物への進化の過程において、大量に繁茂したバイオマス(※)の残骸が地中に堆積し、長い年月をかけて石油、石炭、天然ガスなどの化石資源へと変換されたといわれています。つまり、現代人は藻類から植物への進化の蓄積を掘り起こし、エネルギー源や化成品原料として利用しながら生活しているわけです。 また、現代の植物は藻類の子孫になりますが、人類はその植物を農作物として直接的・間接的に食することによって日々生きています。 ©2017 ちとせ研究所 このように、藻類が存在したことによって今の人類の生活は成り立っており、藻類は人類の生活の基盤を支えている原点といっても過言ではありません。 ※バイオマスとは:動植物そのもの、または副産物などで資源として利用できるものの総称 藻類の産業ポテンシャル 人類と藻類の関わりについて理解していただいたところで、次は産業としての藻類の可能性について説明していきたいと思います。 藻類は様々な産業分野で利用可能 藻類は植物と同様に、『光合成』で増えます。光合成は文字通り、光のエネルギーを利用して二酸化炭素(CO2)と水から炭素化合物を合成する反応です。藻類は光合成により合成された炭素化合物の他に窒素、リン、カリウム、ミネラルといった無機物を取り込みながら複雑な化合物を合成していきます。 合成された種々の化合物は、藻類バイオマスとして各産業の原料として利用することができるため、藻類は様々な産業分野に展開することが可能になります。 ©2017 ちとせ研究所 藻類が合成できる化合物の利用用途は様々です。よく説明される例として利用用途の分野をバイオ業界では色に例えて以下のような表現がなされます。 ●『レッドバイオ』:医薬品原料や機能性素材をメインとした医薬・健康に関連する分野 ●『グリーンバイオ』:食品や飼料といった食に関連する分野 ●『ホワイトバイオ』:燃料や化成品原料といったエネルギー・化学に関連する分野...
![宇宙藻類の時代到来・・](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/3370df580cd949d44e12712ed4289658.png?v=1677574729&width=533)
宇宙藻類の時代到来・・
『宇宙兄弟』という漫画をご存知だろうか。宇宙を目指す兄弟の物語なのだが、綿密な取材を元に構成されているストーリーはもとより、ちょい役の登場人物一人一人にさえ人生を感じる丁寧な作り込みに圧倒される名作である。まだ読まれたことの無い方は機会があれば是非手にとってみていただきたい。 さて、そんな宇宙兄弟になぞらえて今回は『宇宙藻類』と題し、宇宙開発に関する藻類研究をいくつかご紹介したい。 そもそも宇宙と藻類に接点があるの?と思われる方も多いかと思うが、実はかなり古くから注目され、研究が行われている分野である。それというのも宇宙空間に長期間滞在するためには空気(酸素)と食料の自給が求められることになるが、その自給システムに藻類を利用しようというアイデアがあるためである。 藻類は宇宙飛行士が吐き出す二酸化炭素を吸収して酸素を供給することができ、増えた藻体は栄養食として食べることができる一石二鳥の材料となる。しかも植物と比べて栽培のためのスペースや資源が少なくすみ、育つまでの時間も短いという利点も持っているので、宇宙との相性が抜群に良いのだ。 このような宇宙空間での藻類利用を念頭に、2017年12月15日にESA(European Space Agency)のプロジェクトの一環として、生きたスピルリナが初めて宇宙ステーション(ISS)へと打ち上げられた。円筒形のフォトバイオリアクターに入れられたスピルリナは約1ヶ月間ISS内で培養されて、地球上と同じ速度で育って酸素も生成することが確認された。この1ヵ月間の培養期間に4回サンプリングが行われ、それと合わせて培地も4回入れ替えて試験が行われた模様だ。 無重力空間下における液体培養の場合は、液体中への二酸化炭素の供給および発生した酸素の除去が課題になるが、資料をみている限りは気体と液体をガス透過膜のようなもので仕切り、圧力をかけて強制的にガス交換を行う仕組みとなっているようだ。この辺の詳細情報は論文として公開された際にも確かめたい。 Green smoothies in space この記事をesa.intで読む > この試験の装置作成、宇宙ステーションでの実験計画、戻ってきてからのサンプル測定などの様子が資料としてまとめられて公表されていたので、興味のある方は以下の資料にも目を通してみていただければと思う。写真も多く、研究者達の楽しそうな雰囲気が伝わってくる。自分達が作った実験装置が宇宙船(SpaceX)で打ち上げられて、宇宙で実験されて、そのサンプルを分析できる、なんていうシチュエーションを与えられたら研究者だったら誰でも盛り上がるだろう。 また、2018年9月にはNASAでも宇宙ステーションにスピルリナを打ち上げ、微小重力下での増殖能を確認するための試験が行われている。こちらはNASAが企画する『皆のためISS科学(ISS Science for Everyone)』というプログラムの一環として、高校生のチームから応募されたアイデアを元にして行われたようだ。 SFみたいなテーマを高校生のチームが提案して、それを宇宙で実際に試験しちゃうなんて、私が高校生だった時には想像すらできなかった世界である。20年でここまで時代が変わるのであれば、20年後には月に人が住み、火星へ到着した人類がいてもおかしくはない。人が想像できる範囲というのは、いずれ実現できるものなのだなぁとシミジミ感じる。 NASA NASA – NanoRacks-Modesto Christian School-Comparing the Growth of Spirulina...
![【スピルリナStyle】鮮やかなグリーンビール@シンガポール](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/7244fc0da849569b2a2deb39f2515ff1_594e626a-1737-4c1c-9106-f8c1a108675a.png?v=1677556794&width=533)
【スピルリナStyle】鮮やかなグリーンビール@シンガポール
MATSURIプロジェクト編集局としては見逃せない、シンガポール生まれの、スピルリナを使ったグリーンビールに関するコラムです。 これはReddot Brewhouseが製造している、RED DOT Monster Green Lager Beer (モンスターグリーン ラガービール)です。 なんといっても、この色鮮やかなスパークリンググリーンの色が特徴です。スピルリナビールの色は、青色のフィコシアニン、緑色のクロロフィル、橙色のβカロテンと抗酸化作用をもつ天然色素であり、健康に良い色です。※RED DOT Monster Green Lager Beerの栄養成分は分からないため、正確な事は言えません。 Reddot Brewhouseの方にお聞きしたところ、「着色料は使用していません。brewing(醸造)の段階でスピルリナを入れています。」とのことでした。 スピルリナはたんぱく質が70%と豊富で、ビタミン、ミネラルをバランスよく含むため、スピルリナを摂取することで得られるヒトへの良い機能は数多く報告されています。ビールの発酵に欠かせないビール酵母にとっても、スピルリナは良いエサになりそうです。 RED DOT Monster Green Lager Beerは、苦味は控え目、アルコールは5%です。スピルリナビールは麦芽比率からビールの定義をクリアしていますが、ビールの副原料の定義にスピルリナは認められていないので、正確には発泡酒の分類になります。 Reddot Brewhouseはシンガポール植物園(Singapore Botanic Garden)近く, Dempsey hillにある醸造所です。7種類の自家製クラフトビールとお食事が楽しめる、緑に囲まれたビアレストランが併設されています。 REDDOT BREWHOUSE Dempsey Road...
![一生に一度は見てみたい! -藻が作り出す絶景7選-](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/57c6fbfabee3445ff6269a13d6f8066f.png?v=1677302298&width=533)
一生に一度は見てみたい! -藻が作り出す絶景7選-
昨今、藻といえばタンパク質等の栄養面や燃料利用に注目が集まりがちだが、藻の持つ色素も同様に重要な特性だ。昨今、藻といえばタンパク質等の栄養面や燃料利用に注目が集まりがちだが、藻の持つ色素も同様に重要な特性だ。 1.クリミア半島の赤く染まる海(ウクライナ) まず紹介したいのは、ジブリ作品「風の谷のナウシカ」に登場する「腐海」のモデルとなった、ウクライナのアゾフ海の西岸に広がる干潟だ。これは、微細藻類ドナリエラ(Dunaliella)が増殖することによって、海が赤く染まって見えるのだそうだ。 2.ナクル湖のフラミンゴ (ケニア) Kenya Connection: Lake Nakuru, Flamingos, A New Friend – TravelUpdate Shadrack and I made an instant Kenya connection after I brazenly asked if I could...
![藻は世界のサンゴを救う?](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/7244fc0da849569b2a2deb39f2515ff1.png?v=1677301010&width=533)
藻は世界のサンゴを救う?
藻は世界のサンゴを救う? サンゴ礁は、最も多様な海洋生息地と言われており、実に様々な生き物が住んでいる。その生き物を餌にして育つ魚を、あなたは昨日食べたかもしれない。また、美しいサンゴ礁が広がる海で、シュノーケルやダイビングなど楽しんだ経験がある方もいることだろう。サンゴ礁は、漁業や観光業など世界で年間300億ドルの経済効果をもたらし、5億人の生活に直接関与しているのだ。 しかし、サンゴ礁の保全対策を直ちに行わなければ、全世界のサンゴ礁の99%が今世紀中に絶滅する、と気候変動影響モデルの研究は予測している。 サンゴは褐虫藻に頼って生きている 動物であるサンゴは、褐虫藻と呼ばれる単細胞藻類(Symbiodinium属の渦鞭毛藻)と共生関係を結ぶことで生存を維持している。褐虫藻はサンゴの成長やサンゴ礁の形成に必要な物質(酸素や栄養分などの光合成産物)をサンゴへ供給し、その代わりに光合成に必要な窒素、リンなどをサンゴからもらっている。 褐虫藻から栄養をもらう以外にも、触手で動物プランクトンを捕食するそうだが、そこから得られる栄養だけでは健全な生育が難しいと言われている。 褐虫藻と離れ離れになったサンゴの結末 近年、温暖化に伴う水温上昇により褐虫藻の光合成系が損傷され、またサンゴから放出されることでサンゴ骨格が透けて見える状態になるという、サンゴの白化現象が世界中の海に広がっている。栄養供給を褐虫藻に依存しているサンゴは、長時間にわたり褐虫藻との共生関係を失うと最終的に死んでしまう。 褐虫藻が共生しているサンゴ(左)と褐虫藻がいなくなり白化したサンゴ(右)引用元:https://oceanservice.noaa.gov/education/kits/corals/media/supp_coral02d.html サンゴの白化を防ぐには、ストレス耐性をもつ褐虫藻が鍵? 褐虫藻の種間遺伝的多様性がサンゴの白化耐性に大きく関与することが知られている。オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ大学(University of New South Wales)に所属するレイチェル・レビン(Rachel Levin)博士の研究チームは、褐虫藻のシークエンシングデータを用いて、ストレス耐性の増加を図る褐虫藻の遺伝子組換え戦略を立てた。その研究結果は2017年6月30日、ジャーナルFront. Microbiol.に公開された。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5492045/ 「褐虫藻についてはほとんど知られていないため、サンゴ礁保全行動を改善するための情報が得られない。」「褐虫藻は生物学的に非常に独特であり、今まで確立された遺伝工学の手法は適用しない。必要とされる研究を進展するため、我々は褐虫藻の新たな遺伝子解析を行い、その障害(遺伝子組み換え技術の確立)を克服することを目指していた。」とレイチェル・レビン氏が褐虫藻研究の困難性について説明している。 研究者らは、サンゴの白化を防ぐ可能性のある遺伝子(抗酸化遺伝子など)を特定した。「水温が徐々に上昇している海洋環境下でサンゴとの共生が維持できるように、遺伝子工学手法により強化された褐虫藻は、世界的なサンゴの白化現象を減らす可能性を示唆する」と彼らは語った。 しかし、遺伝子工学手法により開発した褐虫藻を環境中へ放出することに関しては、「フィールドベースの試験が始まる前に、潜在的なマイナスのリスクについて広く厳密に研究することが必ず必要だ」と強調した。 また、最近、米・ペンシルベニア州立大学(The Pennsylvania State University)の研究者たちはストレス耐性をもつ新種の褐虫藻(Symbiodinium glynnii)を同定した。この種類の褐虫藻と共生するサンゴが頑強であり、他の褐虫藻種と共生するサンゴにとって酷な環境にも耐えられることが分かった。 どうやら、ストレスに強い褐虫藻が、サンゴを救う鍵となっていくであろう。 参考資料:A super-algae to...
![宇宙開発とスピルリナ -NASAもJAXAも注目の藻類食糧-](http://matsuri.chitose-bio.com/cdn/shop/articles/2d22bcf6dae4213abbffff488439829a.png?v=1677301498&width=533)
宇宙開発とスピルリナ -NASAもJAXAも注目の藻類食糧-
栄養価とタンパク質含量の多さから、宇宙開発においても食用藻類スピルリナの有用性が注目されています。米国航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)では研究が進んでいます。 日本でもスピルリナの宇宙に向けた研究が進んでいます。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、ちとせグループとの宇宙開発研究について、ここでご紹介いたします。 JAXAとのスピルリナ宇宙開発研究 ちとせグループでは、2018年から2019年にわたりJAXAらと一緒に「食用藻類スピルリナを用いた省資源かつコンパクトなタンパク質生産システムの開発」を行いました(ちとせグループの参画企業;(株)ちとせ研究所・(株)タベルモ)。先の研究開発を受けて、2020年にはJAXAとシダックスグループと「月面農場における食用藻類スピルリナの循環型培養システムの改良と生スピルリナ入りメニュー開発」の共同研究を行っています(ちとせグループの参画企業;(株)タベルモ)。 2019年までの研究では、宇宙利用を想定したスピルリナ生産システムの開発に成功しました。2020年はJAXAの協力を受け、実用化に向けさらなるスピルリナ生産システムの改良を行う予定です。さらに、長期滞在する宇宙飛行士が月面農場でスピルリナを培養することを想定し、シダックスグループと共同で栄養価の高い生スピルリナを取り入れた月面滞在食メニューの開発を行っています。 また、2021年度は『国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟の船内環境を利用する実験テーマ(フィジビリティスタディテーマ)』に採択されました。テーマ名「効率的なタンパク質生産とCO2処理を目指したスピルリナの担持体培養実証」を行います。ここでは、宇宙飛行士の健康に重要なISSで育てたスピルリナの生物学的安定性の解析と、スピルリナ培養によるISS内の空気再生可能とする先進的な培養システムの構築を目的に、地上での実験を開始します(ちとせグループの参画企業;(株)ちとせ研究所・(株)タベルモ)。 宇宙で藻類、スピルリナが食べられる日が着実に近づいているのを感じます。 宇宙開発に”生”スピルリナを使用しなければいけない理由 現在、地上で流通している一般的なスピルリナは、加熱滅菌をすることで長期保存を可能としているため乾燥粉末になっています。 しかし宇宙環境では、培養して、すぐに食べる(食材として利用する)ことが想定されるので、非加熱の生スピルリナを使ったメニューを開発する必要がでてきます。生スピルリナは加熱乾燥スピルリナに比べ味や臭いがなく、熱で壊れやすい栄養成分も損なわれずに摂取できるなど、食品として加熱乾燥スピルリナとは性質が大きく異なります。 宇宙開発の研究に必要な「生スピルリナ」を生産、販売している企業は世界でも僅かです。ちとせグループの(株)タベルモは、国内唯一の生スピルリナメーカーであり、また世界的にも唯一大規模に生スピルリナを製品化できているメーカーです。 ちとせグループは、本研究を通して、生スピルリナの認知拡大と研究を推し進め、地球環境にも宇宙環境にも良いタンパク質源を提供していきたいと考えております。