藻類農業は、ビルの立ち並ぶ都会での地産地消を可能にする?

 

新しい農業の形として、藻類農業(Algae-culture)というものが世界各地で作られつつあるという報告をしたばかりだが、今日紹介するのは都市型の藻類農業の取り組みだ。

藻類は、NASAの宇宙ステーション滞在中の栄養源としても利用が検討されるなど、非常に高い栄養価を持った食物である。しかも、その生産能力は植物の数倍〜数十倍にのぼるため、農業に比べて生産面積も小さくて済む。さらに非常に小さく、どんな形の設備でも栽培できるという特徴がある。これらの特徴を生かして、都会の生活の中でも藻類農業を取り入れ行こう、というコンセプトの建築デザインが生まれつつある。

These Architects Want To Make Algae Farming Just Another Part Of Urban Infrastructure

 

先日カザフスタンで行われていた展示会にて、ロンドンをベースとするecoLogicStudioのデザイナーが海洋生物学者や藻類農家と協力し、都市建築の中に藻類農業を取り込んだ建築デザインを発表した。利用する藻類はスピルリナとのこと。スピルリナは牛乳よりカルシウムが多く、人参よりベータカロテンを含み、牛肉よりもタンパク質を含むパーフェクトフードだ。世界で最も食べられている藻類でもある。

BIO.tech HUTと呼ばれるプロトタイプでは、毎日平均612gのタンパク質を生産できる設定になっていて、これは大人12人の推奨摂取量を供給するのに十分な量である(もちろん、毎日大量のスピルリナを食べてることにはなるが。。)。なお、同じ量のタンパク質を供給するには牛だと8頭が必要な計算になるという。そして、これらの牛を育てるには660日の日数と日々70世帯分のエネルギー消費が必要になる。

 

このような食料供給という現実的な側面だけではなく、都市、特に公共の場で藻類農業を行うことのメリットは他にもあるという。ecoLogicStudioの共同創業者の一人であるClaudia Pasquero氏は『こうした統合されたデザインを都市の中で行うことで、エンドユーザーと今までとは異なる形態のコミュニケーションが確立し、それによって様々な消費方法が確立されていくことも目的としています。』と述べている。

日頃自分たちが使っている製品がどこから来ているかをわからないまま消費していくのではなく、目の前で成長していく様子が日々見れて、それを目の前で収穫し、その場で食べることができる。そんな一つの完結モデルが都市の中でも見ることができれば、確かにコミュニケーションが大きく変わるかもしれない。

地産地消を都会で、藻類を使えばそんなマイクロ自給自足ができるのだ。その存在は現代では切り離された『人』と『食』とのつながりをもう一度身近なものにしてくれるかもしれない。これまでは錠剤や緑の粉末、といった日常的な食物とはかけ離れたイメージの藻類だが、クリームやシナモン、ケーキ、パン、といったようなもっと食欲をそそり、美味しさを訴えられるレシピ開発ができれば、もっと身近な食材になっていくだろう。

オフィスビルの真ん中に緑に光る培養装置があって、その中で育っている藻類をその場で収穫して、その場で調理して食べる。そんな生産から消費まですべてが完結した藻類カフェを『都会』に作る、というコンセプトなどどうだろう。大規模で大きく育てる藻類農業もあれば、こうして小さく広げていく藻類農業もあるんだな。そしてその小さな農業を『都会』でやることにきっと大きな意味があるように思える。このアイデアいただき。


参考資料:
FAST COMPANY「These Architects Want To Make Algae Farming Just Another Part Of Urban Infrastructure」
https://www.fastcompany.com/40437960/these-architects-want-to-make-algae-farming-just-another-part-of-urban-infrastructure


 

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