藻類の『色』と『増殖の速さ』をうまく利用した生きているインクの紹介をしたい。
このユニークなアイデアを形にしているのはLiving Ink社。コロラドに拠点をおくコロラド州立大発のベンチャー企業だ。
https://www.instagram.com/p/-welbJnjkj/?taken-by=livinginktech
世界で最もサステイナブルなインクを、藻類で
CEOのScottとCTOのSteveの2人は、コロラド州立大学でPh.Dとして分子生物学の研究をしていた時に出会った。2人とも藻類からのバイオ燃料とバイオプロダクトの研究をしていたという。藻類を使ったプロダクトアイデアを考えている時に、世界のインクの大半は石油由来で毒性の高いものが使われている、ということに気づき、藻類を使った世界で最もサステイナブルなインクを作れないか、というアイデアを思いついたそうだ。
2013年から活動を始め、2015年にはKick starterで製品化に成功。2016年にはTEDでのプレゼンに参加。
7:20あたりからご覧頂くと、Living Inkで描いたイラストが浮き出す様子を見ることが出来る
そしてつい先日 Colorado’s Advanced Industries Accelerator (AIA),からの資金提供が決まり、製品の完成が見えてきたとのこと。今年の夏には製品がローンチされる予定のようだ。こうしてみると、まさにベンチャーのサクセスストーリーの王道をトントン拍子に進んでいるように見えるが、裏では技術的課題の解決含めて色々努力されたことだろう。
藻が育つことで浮き出すメッセージ
さて、彼らのLiving Inkであるが、生きた藻体そのものを利用して作られている。このため、紙に絵を描いた直後は薄い状態で、色もついていない状態なのだが、部屋の光に当たるところに2,3日も置いておくと、藻が増えて緑色になっていく。それによって文字や絵が浮きだす、という仕組みだ。口で説明するのが難しいのだが、実際にどういう感じかをご覧になられたい方はTEDプレゼンテーションの7:20あたりからの動画を見ていただきたい。可愛いフクロウの絵が、時が経つにつれて増えて、文字も浮き出していく様子がわかる。
https://www.instagram.com/p/9aDcIxHjky/?taken-by=livinginktech
ユニークなのは、時間とともにメッセージ性がやわらかく変化していくというところで、これは新しい発想ではないだろうか。植物が育っていくような感覚で、カードが育ってメッセージが浮きだす。時間軸が加わることで物語が生まれるところに、このアイデアの本質があるように感じた。
実際は育ちきった後はどうなるのか、とか、寒いところだと上手く育たないんじゃないか、とか、このペンの保存期間はどれくらいなんだろうか、とか。。細かいところを気にすれば色々ツッコミどころがないわけではないのだが、このインクに対してそんな小さなことを指摘するのは野暮だろう。この素敵なアイデアに乗って、時間とともに変化する様子を存分に楽しむのをマナーとしたい。
https://www.instagram.com/p/BTUDylClHEb/?taken-by=livinginktech
このインクを使ったカードを小さな子供に送り、『光合成』や『藻類』の存在を身近に感じてもらうのも面白いかも。
購入は以下のサイトから。但し、注文から1ヶ月かかるそう。
Time
参考:
Living Ink Raises Funds From Colorado’s AIA for Sustainable Algal Ink/synbiobeta
https://synbiobeta.com/living-ink-raises-funds-from-colorados-aia-for-sustainable-algal-ink/
Living Ink | Time-lapse Bio-ink/KICKSTARTER
https://www.kickstarter.com/projects/livingink/living-ink-time-lapse-ink/updates