今年6月、米トランプ大統領が地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を発表したことが日本でも大きなニュースになった。一方欧州では、温暖化対策を推進するための具体的な政策が明らかとなったので紹介する。
欧州における温暖化対策を巡る動き
7月6日、フランスのマクロン政権は2050年までの低炭素化長期目標を発表し、排出権取引やCO2を吸収させる取り組みにより、CO2排出量を”ゼロ”にする「カーボンニュートラル」を達成すると宣言した。そして、この目標を達成するため、2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止することを宣言した。
さらに同月、イギリスも大気浄化計画の一環として、フランスと同様に2040年までにガソリン車・ディーゼル車の新規販売を全面禁止すると発表した。
欧州では英・仏だけでなく、ノルウェー、オランダやドイツも同様の政策を検討している。脱ガソリン・脱ディーゼル方針を打ち出す国が増える中、自動車業界はもちろん、バイオ燃料市場はどのように変化していくのであろうか?今後を予測する前に、まずはバイオ燃料利用の歴史を振り返りたい。
バイオ燃料利用のこれまで
バイオ燃料の大規模な利用は1970年代まで遡る。まず、世界最大の砂糖の生産・輸出国であるブラジルが、1930年代よりサトウキビを原料としたエタノール生産を国家主導で開始した。その後、1973 年の第一次オイルショックを契機に同国は「国家アルコール計画(PRO-ALCOOL)」を策定し、エタノールの生産拡大が推進された。現在も、ブラジルはバイオエタノール大国として、燃料用エタノールの活用が進んでいる。ちなみに、同国では国内全てのガソリンスタンドにおいてエタノールの割合が25%以上とすることが義務付けられている。
近年、地球温暖化対策、エネルギー安全保障、循環型社会の形成などの観点から、バイオ燃料は再生可能エネルギーとして注目され、アメリカを始めとした世界各国において、研究開発及び実用化が活発になっている。その中でも、サトウキビやトウモロコシなどを原料にした「第一世代バイオ燃料」、セルロース系原料やエネルギー作物を使う「第二世代バイオ燃料」に続き、生産効率が高く、食料や土地利用との競合のない「第三世代バイオ燃料」と呼ばれる藻類燃料が大きく期待されている。
自動車業界の転換とバイオ燃料の行方
ガソリン車・ディーゼル車の生産が縮小に向かっている中、今後も持続可能な液体燃料の生産に注力するメリットがあるのかという疑問が湧いてくる。こうした疑問に対し、英Heriot-Watt大学のRaffaella Ocone教授は、次のように答えている。
持続可能な液体燃料の開発は継続すべきです。というのも、従来のガソリン車から電気自動車へと一気にシフトすることは不可能であり、ガソリンエンジンと電気モーターの両方を持つハイブリッド車が今後重要な役割を果たしていくからです。
また、航空、船舶、コンテナ輸送においては、車と異なり電気化が困難であるため、今後も液体燃料への依存は変わらないと考えられます。一例として、米海軍は、バイオ燃料を使った世界初の艦隊を立ち上げています。
そもそも、温室効果ガス排出の削減は世界共通の課題である。現在、EU 全体のCO2排出量のおよそ23%が輸送部門によるものであり、その約7割が道路輸送である。脱炭素社会に向けた戦略として、EUは温室効果ガス排出量を2050年までに1990年比で80~95%削減することを目指しているが、今回のガソリン車・ディーゼル車の販売禁止はその一翼を担うことになるであろう。
今後、従来のガソリンエンジンは減少の一途を辿っていくであろうが、バイオ燃料については引き続き需要が発生し続けるであろう。
参考資料
・France to ban sales of petrol and diesel cars by 2040
https://www.theguardian.com/business/2017/jul/06/france-ban-petrol-diesel-cars-2040-emmanuel-macron-volvo
・Navy launching first Great Green Fleet next week
https://www.stripes.com/news/pacific/navy-launching-first-great-green-fleet-next-week-1.388769#.WbIswrJJapp
・A European Strategy for low- emission mobility
https://ec.europa.eu/clima/policies/transport_en