最近は藻ガール尾張のマニアックな紀行記事に押され気味で、私の記事の存在感低下が著しい。それはそれでいいことなのだが、そもそも私の記事と藻ガールの記事の何が違うのだろうか、ってところを色々な角度から考えた結果、『藻に対する愛の差』ってことに行き着いた。よっしゃ、じゃあ俺も負けずに藻への愛に溢れる記事を書いたろうじゃないの!
ということで、緊急企画『現時点で国からの研究予算の交付を受けて進めらている藻類関連の研究についてのまとめ』をお届けしたい。すいません、やっぱ愛より金っすわ。
国内の藻類研究予算の出所
まずは日本国内の藻類研究予算がどのような省庁から出ているかの概要図をまとめてみたのでご覧頂きたい。
藻類はその特性上、研究対象が幅広い。このため、特定の省庁に固まることなく、色々なテーマで研究予算がついて、その管轄省庁がどこなのか混乱することも多い。このため、まずは省庁、外局・内局、独立行政法人、大学、民間など、私なりに研究資金が降りてくる階層順に整理してみたのが下の図となる(今回は藻類研究に予算を出している機関だけをピックアップしている)。
例えば内閣府の立ち位置や、独立行政法人と省庁との関係性とか、これまではぼんやりと捉えていたところがあったが、図に落とし込むことで整理できたように思う。
日本の行政システムによる研究推進体制を俯瞰してみると、まずは文科省下のJSPS(日本学術振興会)が管轄している『科研費』を中心に基礎的な研究開発が数多く進められている。科研費の多くは大学がメインであるが、これらの基礎研究の中から、大きな成果が出たものや時流に乗ったものが育ち、次のプログラム(他省庁も含む)としてサポートされていく流れとなっている。
続いて、実際に現在進められている藻類研究を見ていく。
現在進行している藻類研究の一覧
上記ページに、現在進行中の藻類関連研究の一覧をまとめたので是非ご覧頂きたい。管轄している省庁、部局、プログラム名、研究テーマ名、予算規模、対象者で区別している。
研究テーマ数でみると、圧倒的に数が多いのはやはり科研費である。現時点で大小合わせて90近いテーマの藻類研究が進められている。これらの中から未来の大型プログラムへと育つシーズがでてくることを期待したい。また逆に言えば、これら科研費で動いている小型の研究開発テーマ群を眺めることで、研究者たちが次の時代の藻類研究として何に興味を持っているかのトレンドを見ることができるだろう。
ちなみにこういった研究予算の流れ方は、藻類研究に限らず他の研究分野でも似た構造をとっているため、興味のある対象分野でどのような研究がトレンドとなるかを予測する際に科研費のテーマを眺めるのはおすすめの方法である。
次に、動いている研究テーマを『アカデミア系(学問的な興味)』と『ビジネス系(実用化を意識)』に大きく分けてみる。このうちのアカデミア系テーマは、共生、進化、分類といった『進化分類系』、赤潮、アオコ、海中塩分測定といった『環境系』、光ストレス耐性、光エネルギー散逸といった『光合成系』、というような幾つかのカテゴリーに分けられる。
ビジネス系のテーマでは『生産系』『リサイクル系』『CO2利用系』に分けられる。このうち生産系ではやはり燃料生産関連のテーマが多いが、それ以外にも機能性物質(ポリアミン、多糖類、プラスティック、デンプン、脂質)なども出てきている。リサイクル系では排水処理、下水利用、焼却灰利用、リン回収といったものが多い。 CO2利用系はどのテーマに対してもアドオンできるので、メインのテーマ+α的な位置づけで使われている。
今回、こうして藻類研究だけをまとめてみたわけだが、想像していた以上に幅広く、かつ多くの藻類研究に予算がついていることがわかった。まだまだ私が把握しきれていない藻類研究もあることだろう。さらには過去に行われたものの、そのまま日の目を見ずにお蔵入りしているテーマも数多くあるはずだ。日本の藻類産業を創り上げていくためにも、このような藻類研究の全体像を俯瞰しながら、どういった知見や技術が日本にあるのか、もしくはあったのか。それらを整理し、アウトプットすることが大事だ。
バラバラに行われている藻類研究を体系化してまとめ、理解しやすい形で情報発信していくことは優秀な人材の業界への流入にもつながっていくことだろう。そのためにも、藻類に興味を持った誰もがすぐにアクセスできて、国内外の藻類研究の全体像や情報、最新動向がわかる『場』を作ることが重要だ。Modiaが目指すべきは藻類に関する最初の場になることだ。そして、そういった場に命を吹き込む、もっとも大事なピースが『藻に対する愛』なのだろうなぁ。