最近は日本や世界のグラント情報など、少し堅い記事ばかりなので、たまにはコラム的なところを書きたいと思う。最近、循環の時間について思うことがあったので、今回は時間軸でみた藻類について考察してみたい。
以下の図は人類が食べてる農作物であったり、使ったりしているエネルギーの循環サイクルを時間軸ごとに大まかに分類したものである。例えば、葉物野菜は定植されてから出荷されるまで早い物では1ヶ月単位で回っている。米のような穀物は日本だと1毛作なので、1年に1回転としよう。一方、樹木だと芽生えてから成木になって利用されるまで10年はかかるだろう。そして我々が日頃使っているエネルギーは、化石資源からきているので、億年単位のサイクルでまわっているものと言えよう。なお、全ての循環の源は太陽エネルギーであることは言うまでもない。
このように我々が日々利用している食料やエネルギーというのは、それぞれ異なる時間軸の循環に乗っている、ということがわかっていただけると思う。人類はこれらの循環時間をうまくミックスをしながら生活を、さらには文化を作り上げてきたわけである。
食料源・エネルギー源の時間サイクルの違い(筆者作成)
さて、上の循環時間の分類図の中に、日単位の循環がないことにお気づきだろうか。私も整理してて驚いたのだが、意外にも人類は『日単位の循環』というのをこれまで持っていなかったのだ。牛乳とか卵とかあるじゃん、という意見もあるかと思うが、これらは鶏や牛を介して餌が変換されているものなので、ちょっと違う。餌まで遡って見れば野菜(月)や穀物(年)の時間軸に依存しているものといえよう。
そこでジャーン、我らの藻類の登場である。藻は早いものだと1日単位で倍に増えていくため、日単位の循環を作ることができるのだ。先ほどの図でいくと以下の様な位置にスポッとハマるのである。
藻類の時間サイクル(筆者作成)
この話だけ聞くと『ふ〜ん、そうなんだ』で終わられてしまいそうだが、これって結構革命的な話なのではないかと私は考えている。
大昔、狩猟が生活の基盤であたっとき、人類は森や平原、海などに生息する動物や魚を狩り、生活の糧を得てきたとされている。この場合、一つの地に定住せずに、小集団で移動しながら偶然性に依存する暮らし方をしていたわけだ。そんな中、1万5,000年ぐらい前に農業が発生したと言われているが、そこから人類は月、年、10年という単位の循環を計画的に組み合わせながら、定住生活を生み出してきたわけだ。農業の発生により人類の生活様式や文化が大きく変わったことに異論を唱える人はいないだろう。
また、人類は200年ほど前の産業革命によって、今度は化石資源という億年単位のとんでもなく大きな循環を使うようになった。この産業革命によって、また人類の生活は大きく変わったわけであり、この変化に対しても異議を唱える人は少ないかと思う。
こうして振り返ってみると、新しい時間軸の循環の登場のたびに人類の生活様式や文化が劇的に変化しているように見えてこないだろうか。そういった視点から見たときに、今生まれつつある『日単位の藻類』という新しい循環は、人類の生活様式を大きく変えていく潜在力があるんじゃないかと思うのだ。
そんな風に循環の時間のことを考えると、そもそも生まれて死ぬまでが100年程度の人類が扱っていいのは、100年未満の循環なのかもな、なんてことをふと思ったりもする。億年単位の大きな循環がどんな動きをするか想像すらできない中で、寿命100年の生物がそれをうまく使いこなせる気がしないというか。。ただ、そんな大きな循環を使って生きている現代人だからこそ、藻類を使った新しい循環系を見出すことができたのかも、とも思う。考えてみれば億年単位の循環を作ってきたのは藻類なんだなぁ、、なんて思うと、この繋がりになんとも言えない妙を感じるのである。