台湾出身の私は、冬はもちろんのこと夏でも一時帰国をする時には、どんなに暑くとも毎回必ず麻辣火鍋(中華圏全体で広く食される辛味の強い鍋料理の一つ)を食べる。
台湾の麻辣火鍋は、中央を太極の陰陽に見立てて仕切った金属製の丸鍋に、辛い紅湯スープとマイルドな白湯スープの2種類を別々に入れて煮立て、好みのスープの方に好きな食材を入れて食べる「鴛鴦火鍋(おしどりひなべ)」と呼ばれる形式が特徴的だ。一度に味の違う2種類のスープを楽しむことが出来るのが、鴛鴦火鍋の醍醐味である。
台湾に行かずとも、日本で台湾と同じ味を楽しみたい方におすすめしたいのが、日本に直営店舗がある天香回味[テンシャンフェイウェイ]という薬膳火鍋専門店である。60種類以上の漢方薬と香辛料で作った秘伝のスープの深み、優しさと複雑さを是非一度味わってみてほしい。
さて、鴛鴦火鍋といえば一般的には赤白の2色鍋をイメージするものだが、なんと、近年中国では常識の枠を超える緑白の2色鍋が出現したそうだ。そして、その緑色のスープの正体こそがスピルリナである。
緑色の火鍋を最初に開発したのは、四川に本店がある魚游天下というスピルリナの火鍋専門店のようだ(中国の発明特許番号:200810093149.3)。魚游天下はスピルリナを健康のテーマとし、魚を中心とした栄養バランスの良い健康的な食事を提供する飲食チェーン店である。中国雲南省で生産したスピルリナを使用し、中国人に馴染みの深い火鍋に取り入れることでスピルリナを食文化として普及させようとしている。
新たな食材を普及させるための戦略として、全く新しい食習慣を身につけさせる方法もあれば、地域ならではの食文化に合わせ、日々の食生活に徐々に浸透させていく方法もある。スピルリナを火鍋に取り入れて美味しく食べる方法は、世界最大のスピルリナ生産国でもあり、火鍋という食文化が広く浸透している中国ならではのアイデアだと思う。
私自身はこのスピルリナ火鍋をまだ食べたことはないのだが、美味しいと評判は上々らしい。魚游天下以外の飲食店でも今後続々と提供されるであろうスピルリナ火鍋によって、火鍋業界に緑の革命が起こることを期待している。
参考資料
http://www.cy8.com.cn/pinpai/589
http://news.21food.cn/6/925741.html