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Modia(藻ディア)を運営している私たち「ちとせグループ」は、”ちとせ研究所”を中核とするバイオベンチャー企業群です。生き物(主に微生物、藻類、動物細胞)の研究開発から事業の展開までを通貫して行えるバイオのプロフェッショナル集団です。
ちとせグループが社会に貢献できる1つとして、専門的な正しい知識を、わかりやすい言葉に変えて、みなさまにお伝えすることだと考えています。 Modia(藻ディア)の場をお借りして、みなさまに知ってもらいたい知識をお届けします! |
ウイルスとは?-新型コロナウイルスも、生き物ではないから治療が難しい-
先のModiaの記事で、ウイルスとは何かを、生物学的な視点からお話をしました。結論は、ウイルスは生物ではないということでした。
今回の記事で1番知ってもらいたいことは、ウイルスは生き物ではないため、増殖を止めることが難しいということです。
病気の原因として、みなさまが混同している可能性があるのは、「ウイルス」「細菌」「真菌」だと思います。人に感染して、増殖して、似た症状が表れるため、この3種類はどれも同じだと思っている方が多いように感じられます。
比較のため、今回は「ウイルス」「細菌」「真菌」の性質や構造、治療の違いと、病原体や病名の種類をまとめました。
ウイルスは生物ではないので、細菌や真菌との治療方法とは根本的に違うことがわかります。
細菌と真菌は分裂、増殖するときに、細胞の構成成分(細胞膜、細胞壁、タンパク質など)を合成します。治療薬には、細菌や真菌が細胞構成成分を合成する過程を阻止できる薬が使われます。ヒトも同じ生き物ですが、細菌や真菌にはあって、ヒトにはない細胞構成成分を治療薬はターゲットにしているので、治療薬はヒトには効きません。
一方で、ウイルスの増殖は宿主の細胞成分合成機構を利用します。例えば、ヒトに感染するウイルスの場合、宿主はヒトです。ウイルスの増殖を阻害しようとすると、宿主の正常な細胞の増殖も阻されてしまいます。したがって、新型コロナウイルスはもちろん、大多数のウイルスの感染による病状に対しては基本的に対処療法をすることしかできません。ウイルスの予防的観点からの有効な治療薬は、個々のウイルスに対してワクチンを開発し接種することです。ワクチンを接種すると、そのウイルスに対しての免疫力がつきます。自分自身がもつ免疫の力でウイルスを排除するので、日常生活の中でウイルスに対処できるよう免疫力を高めておかなければいけません。
スピルリナをはじめとする藻類に免疫力を高める効果があることは昔から知られています。また、スピルリナでワクチンを作る研究も進んでいます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
ウイルス・細菌・真菌の比較
| ウイルス | 細菌(真正細菌) | 真菌(菌類) | |
| 電子顕微鏡 写真 |
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| 英語 | virus | bacteria | fungus |
| 分類 | 無生物(粒子) | 生物(細胞) | |
| 自己複製 | できない | できる | できる |
| モデル図 | ![]() |
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| 基本構造 | 核酸がカプシドと呼ばれるタンパク質でできた殻に包まれている。種類によってはエンベロープを言われる膜がカプシドを包み込む。 | 細胞膜に包まれる。核酸と核酸からタンパク質を作るリボゾームがある。(原核生物の細胞構造) | 細胞膜に包まれる。核酸は核膜に包まれている。リボゾーム、様々な細胞小器官がある。(真核生物の細胞構造) |
| 大きさ | 20 – 300 nm | 0.5 – 5.0 µm | 2 – 10 µm |
| 核酸 (遺伝情報) |
DNA/RNA | DNA | DNA |
| 増殖機構 | 他の生物(宿主)の細胞に寄生し、宿主の核酸複製機構、タンパク質合成機構を利用して増殖する。 | 分裂により自己増殖する。 | 分裂により自己増殖する。胞子を作り拡散する。 |
| 治療薬 | 特定のウイルスにはワクチンが開発されている(インフルエンザ、はしかなど)。抗ウイルス薬も開発されいるが、大多数の、もしくは新型のウイルス感染には基本的に対処療法をすることしかできない。 | 抗生物質 原核生物は細胞構造は真核生物(ヒトも含まれる)と大きく違うため、原核生物特有の細胞構造(細胞壁など)やタンパク質の合成を阻害することで細菌の増殖は抑えられる。 |
抗真菌薬 真菌特有の細胞構造(細胞壁など)の合成を阻害することで真菌の増殖は抑えられる。(※抗生物質は効きません) |
| 感染したときの病名 | 風邪 | 炭疽 | アスペルギルス症 |
| 水疱瘡 | 細菌性髄膜炎 | ブラストミセス症 | |
| 手足口病 | カンピロロバクター | カンジダ症 | |
| デング熱 | コレラ | 真菌性髄膜炎 | |
| エボラ熱 | ジフテリア | 白癬 | |
| インフルエンザ | 壊疽性筋膜炎 | ||
| 肝炎 | 淋病 | ||
| ヘルペス | ヘリオバクター | ||
| HIV / AIDS | 在郷軍人病 | ||
| 子宮頸がん | ライム病 | ||
| はしか | ペスト | ||
| おたふく風邪 | 肺炎 | ||
| ポリオ | サルモネラ | ||
| ウイルス性胃腸炎 | 梅毒 | ||
| ロタウイルス | 破傷風 | ||
| 風疹 | 結核 | ||
| 帯状疱疹 | 腸チフス | ||
| ウイルス性髄膜炎 | |||
| ウイルス性肺炎 | |||
| ジカ熱 | |||
| 病原体 | Adenovirus(アデノウイルス) | Bacillus (rod shaped) | Zygomycota (接合菌。カビなど) |
| Arenavirus | Bordetella | Ascomycota (子嚢菌。大腸菌など) | |
| Bacteriophage T4 | Borrelia | Basidiomycota (担子菌。キノコなど)) | |
| Bunyavirus | Brucella | Deuteromycota (不完全菌) | |
| Coronavirus(コロナウイルス) | Clostidrium | ||
| Flaviviridae | Coccobacilli | ||
| Herpesvirus(ヘルペスウイルス) | Coccus (sphere shaped) | ||
| Infulenza virus(インフルエンザウイルス) | Corynebacterium | ||
| Marburg virus | Diplococcus | ||
| Orthohepadnavirus | E.coli(大腸菌) | ||
| Picornavirus | Leptospira | ||
| Poxvirus | Meningococcus | ||
| Respiratory syncytial virus (RSV) | Neisseria | ||
| Retrovirus | Pseudomonas | ||
| Tobacco mosaic virus (TMV) | Shigella | ||
| Spirilla (spiral shaped) | |||
| Spirochaetes (coiled) | |||
| Staphylococcus(ブドウ球菌) | |||
| Streptococcus(連鎖球菌) | |||
| Vibrio (curved rods) | |||
| Treponema | |||
(Scientific Toolkit, Differences between virus, bacteria and fungiより改変)
| ちとせグループでは、これからも、みなさまに知っていただきたいバイオの知識をお伝えしてまいります! |
<参考資料>
細胞の分子生物学(第4版), ニュートンプレス, 2004年
https://www.med.kindai.ac.jp/transfusion/ketsuekigakuwomanabou-252.pdf
http://www.scitk.org/subsides/Natural_Science/Biology/diff_bac_fung_vir/diff_bac_fung_vir.phphttps://en.wikipedia.org/wiki/Coronavirus
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/covid19_mizugiwa_200221.pdf
https://en.wikipedia.org/wiki/File:Coronaviruses_004_lores.jpg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:EscherichiaColi_NIAID.jpg
https://pixnio.com/science/microscopy-images/close-up-of-an-asexual-aspergillus-sp-fungal-fruiting-body
https://en.wikipedia.org/wiki/Angiotensin-converting_enzyme_2
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Coronavirus_replication.png










